【西穂独標①】厳冬の西穂独標! ロープウェイを使って西穂山荘へ

冬に山小屋を使って登山ができるところは、なかなかありません。特に日本アルプスを見渡すと、指で数えるくらいしか山小屋が開いておらず、2月は特に山小屋が休業中であることが多い時期です。

それでも高い山に登りたい!というクライマーの願いをかなえてくれるのが、西穂山荘です。北アルプスに位置しているのに、何と通年営業している素敵な山小屋です。

今回は、西穂山荘で一泊して西穂独標に挑戦していきます。

目次

登山データ

活動時期時間歩行距離累積標高コース定数
2024年2月23日(2Days)6時間25分5.9km667m13

新穂高ロープウェイ乗車

2月23日の12時57分、ロープウェイに乗れる新穂高温泉駅からスタートです。

この日は3連休の初日ということもあって、混雑を予想していましたが、雪が降っており天候は良いとは言えないこともあってか混雑しておらず、駐車場は70%くらいの駐車率でした。

乗車の際は、目の前にある有人の切符売り場か、横に置いてある券売機で乗車券を購入します。

事前にWebで乗車券の予約をした場合は、横の券売機から購入可能です。なお、登山をする方は追加で荷物券の購入が必要です。荷物券は往復で600円になります。

西穂高口に行くには、2つのロープウェイを使います。

一つ目のロープウェイでは、「鍋平高原駅」まで運んでくれるので、そこから1分ほど歩いて第二ロープウェイの乗り場「しらかば平駅」に向かいます。

この時期なので、雪は普通に積もっています。

それでも駅間は整備されているので、ロープウェイの区間はスニーカーでも安心です。

ロープウェイ内の写真は、帰りに撮影します。

第二ロープウェイの終着点、「西穂高口駅」です。ここで休憩や何か食べることができますが、昼時は盛況です。

なお、ここで登山計画書を記載するスペースがあるので記載・提出を忘れずに!

西穂山荘への道のり

食事処を抜けると、登山口があります。

アイゼンの装着は外でやりましょう。なお、登山目的ではない方も、外に出て景色を眺めることができます。

外に出ると、標高は2,000メートルを超えていることもあり寒いです。

そして、想像以上にスリップがひどいので、この日は最初からアイゼンを装着して西穂山荘に向かいます。

13時58分、展望は無いですが意気揚々とスタートです。

この周辺は頂の森と呼ばれており、ハイキングコースとして誰でも楽しめる場所となっています。

快晴であれば、北アルプスの眺望が良い展望台に行きたいところです。この日は晴れる気がしない曇りとなっているため、スルーして西穂山荘へ。

登山口はハイキングコースの先にあります。

西穂は年中人気の山域なので、トレースはばっちりです。

西穂山荘までの道は樹林帯が中心となっており、特に急登と呼べる箇所や絶景ポイントなどはありません。

ひたすら雪の道を木々を横目に通っていきます。

こういう道が続くと、つい動物の足跡を探してしまいますが、今回は全然見つかりませんでした。

ロープウェイから西穂山荘までの道は、しばしばこのようなオレンジ色の案内札が木に掛けられています。

前が見えない程の悪天候になった場合に、こういった目立つ色の案内札があると非常に心強いですね。

やはり人気の山域ということもあり、苦しいラッセルとは無縁です。

幸い、曇っているとはいえ風は弱いため、登っていく上での障壁はありません。

西穂山荘までアイゼンをつけないまま登っている方も多いですが、個人的には装着した状態で登ったほうが体力を無駄に消費しないで済むと思いました。

ロープウェイから歩いてきて50分。

しばらくは傾斜がゆるい道のりでしたが、西穂山荘が近づいてくると少しずつ傾斜がついた登山道に変化してきました。

西穂山荘まで後10分くらい、もうすぐ到着です。樹林帯の終わりっぽい雰囲気になってきました。

ロープウェイで2,000メートル以上まで連れて行ってくれるうえ、通年営業している山小屋まであると考えると、西穂がどれだけ恵まれた環境であるかが見てとれますね。

勿論あまり遅くなってはいけないですが、こういった利便性が登山口を昼に出発しても全然大丈夫な所以です。

西穂山荘の手前、最後の方は道幅が少し狭くなっているので、アイゼンを装着して歩いていると注意が必要です。

自分のアイゼンに引っかけて転倒してしまうケースがあるので、最後まで油断せず慎重に向かいましょう。

西穂山荘到着

15時10分、この日の目的地である西穂山荘に到着です。

見渡しても真っ白で何も見えないですが、山小屋に到着した安心感は何物にも代えがたい感覚です。

宿泊の受付はこんな風に雪洞の奥になっています。なんとも粋な入口ですね。

アイゼンは入る前に脱ぎましょう。入口の奥に保管できる場所が用意されています。

西穂山荘はテント場も併設されており、ここも結構人気です。

小屋に近くて素晴らしい環境ですが、スペースはそこまで大きくはないので、30張くらいが限界です。

入口から入って受付を済ませます。受付の奥には、このように大きな食堂があります。

この日は団体で雪山講習が行われていたため、この後すぐに食堂で講義が始まりました。

曇りのち晴れ

部屋にいても特にすることがなくて暇を持て余してしまうのが、山小屋泊あるあるですね。

そんな中、一緒に登った相方から「外の景色が凄い」とメッセージが来たので、慌てて外に飛び出します。

なお、入口の雪洞付近は大変滑りやすいので注意が必要です。

雪洞の外では、雪山講習が行われているのですが、何やら「オ~っ!」と歓声が聞こえます。

この日はまともに景色が見れなかったこともあり、期待に胸を膨らませながら雪洞を抜けてみます。

そこには期待を超えた景色が・・・

美しすぎる景色が広がっていました。

西の空に、太陽が空と雲を染めています。これが見られただけで大満足です。

幻想的な雲海と、雲の影響で揺れるように落ちる太陽の共演が見事で、ずっと見ていられる光景が目の前にありました。

部屋にいたままだったら気付かなかったので、メッセージを送ってくれた相方には感謝しかないです。

西穂丸山の方を見てみると、夕陽に照らされて山肌が輝いています。

丸山まで登ってこの風景を見る時間はなかったので、この場所から景色を眺めていました。それでも最高の景色であることは疑いようがありません。

上の方から見る景色は明日の楽しみとして、とっておきます。

日が落ちると同時に、一気にガスって視界が白くなりました。

あの瞬間だけ素晴らしい風景が見られたと思うと、今の自分が幸運すぎて明日上手くいかないのではないかと心配になってしまいました。

これも冬山登山の素晴らしいところですね。基本的に白い景色しか見ていないので、朝陽や夕陽が更に映えて見えます。

たっぷり堪能したところで、ちょうど夕食時なので山小屋に戻ります。

西穂山荘の夕食です。味は間違いない美味しさで、冷え切った体に温かいけんちん汁とお茶が嬉しいです。

実は新穂高ロープウェイから西穂山荘までの間は何も食べていなかったので、かなり腹が減っていました。エネルギー補給をする前に山荘に着いてしまったのもありますが、色々夢中になると食事を忘れてしまいがちになってしまう、悪い癖が染みついてしまっています。

なお、ご飯、けんちん汁、お茶はおかわり自由です。

さあ、この日の最後に最高の景色が見られて満足したところですが、今回の目的は西穂独標です。

今回はハーネスやロープ、スリングは持ってきていないので、アイゼンとピッケル、そして自分の判断を最大限に信用して安全に登ることが求められます。

冬の西穂は、丸山まで行くか、独標まで行くか、西穂高岳まで行くかで難易度が全然違います。

独標まで行く場合、特に独標の直下は難易度が他のところより高くなっています。

自分の経験を過信してはいけないですが、モンブランや冬の硫黄岳・横岳・赤岳の縦走を超えてきたこともあり、自信はありました。

ところが、西穂独標直下が何故危険なのか・・・

翌日、その予想外の理由を身をもって体験することとなります。

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