【冬季・雪山登山】雪山レベルアップに最適!東天狗岳日帰り登山

今回はお気に入りの山域、八ヶ岳より、東天狗岳に日帰りで向かいました。冬山のガイドブックなどでは、やや長めの日帰りルートとして紹介されている事が多いですが、樹林帯あり、稜線歩きあり、岩場あり、絶景ありの大満足ルートです。今回は東天狗岳の花形ルートである、渋の湯から黒百合ヒュッテ・中山峠を経て東天狗岳へ登頂しました。

目次

登山データ

活動時期時間歩行距離累積標高コース定数
2023年3月4日(1Day)7時間00分9.5km822m20

渋の湯~黒百合ヒュッテへ

今回は後輩と一緒に登ります。8時10分くらいに渋の湯へ到着。駐車場の前にはお兄さんが誘導してくれて、「先に受付を済ませてから、駐車場に戻ってきてくださーい!」と案内いただきました。先に受付で1,000円を支払い、駐車しました。私たちが来た時点で、あと5台駐車できるかどうかの瀬戸際でした。

渋の湯を出発し、最初はちょっと急登ですが、硫黄の香りがこのへんまで漂っていて、気持ちいいです。硫黄の香りが苦手な方もいますが、都会では感じることができないので新鮮です。

登山道のほうを見ると、登山口直後にありがちな急登です。チェーンスパイクがあれば格段に登り易くなりますが、雪はしっかり踏み固められていて、チェンスパやアイゼンがなくても靴がしっかり雪を捉えてくれます。

急登は長くは続かず、すぐに平坦な道に出ます。走りたくなるような道です。

かなり空高くから、カラスの鳴き声が聞こえます。エサとなるようなものは無い気がしますが、もしや登山者が落とすごみを狙っているのか?と一抹の不安がよぎります。

登山口から12~13分ほどで、最初の分岐。手前から来ましたが、高見石方面に行くこともできます。

ベースレイヤーの上にミドルウェアを2枚、そのうえにハードシェルを着ていたので、歩いていると暑すぎてたまりません。しびれを切らしてミドルウェアを1枚脱ぎ、ビーニーも取りました。

だんだん日が高く昇り、木漏れ日の隙間から日光が差し込むようになったことで、気分も昂ります。

このような樹林帯が長く続きますが、辛くはないです。ペースを守って息をはき切ることを意識できれば、バテることなく気持ちのいい樹林帯歩きが楽しめます。終始トレースがしっかり残っていたので、黒百合ヒュッテまでは道迷いの心配も少ないです。

2つ目の分岐ポイント。ここまではノーアイゼンで行けましたが、ちょっと進んだところでアイゼン装着。

年季の入った案内板ですね。

2つ目の分岐から3つ目の分岐までも、ほぼ平坦な道です。唐沢鉱泉からのルートと合流し、黒百合平へ。

周りはシラビソに囲まれており、この際は更に深い森林へ入っていきます。

黒百合平が近づくにつれ、空が開けてきます。森林限界を越えるワクワク感は何度味わっても最高です。

10時26分、黒百合ヒュッテに到着しました。すでに20名ほどの登山者が休憩しており、中には爆速で上から降りてくる人もいました。また、テント場には5張ほどテントが張られていましたが、まだ張れるスペースには余裕があります。

ここは美味しいビーフシチューが有名で、それが目当てで訪れる人も少なくないです。

天気もよく風も穏やかで、東天狗岳に向けてますます気合いが漲ります!

東天狗岳の頂へ

黒百合ヒュッテで10分ほど休憩してから、東天狗岳へ向けて出発。黒百合平の斜面はこのように雪が針葉樹を埋めています。2日前に降雪があり、ほどよく風も吹いていたので、雪質はザラザラで固いです。

黒百合ヒュッテから20分ほどで中山峠に到着。これまで基本的に樹林帯で展望が隠されていたので、ここからがお待ちかねのパノラマゾーン。それと同時にちょっと難易度も上がります。

中山峠からは木々の間から東天狗岳と、僅かに西天狗岳が見えます。雪をかぶった東天狗は非常にピラミダルな山容に見え、北八ヶ岳とは思えないようないかつさを感じます。

東側の展望が開けてきました。遠くに見渡せる小海の町も標高1,000mを越えています。

朝方はよく朝靄や雲海に隠れて見えない事が多いので、しばらく足を止めて見とれてしまいました。

中山峠から少し歩いたところ、結構な傾斜の急登があります。カメラを上に向けてこの角度なので、上り続きで疲労の溜まった足に効きます。落ち着いて歩幅を小さく、ゆっくり登りましょう。

急登を一登りすると、ゴツい東天狗岳と、たおやかな西天狗岳が眼前に大きく現れました。同じ天狗の名を冠していながら、見える印象が全然違いますね。

東天狗岳に向かう途中は、大きめの岩がゴロゴロと転がっていますが雪は風などで吹き飛ばされているので目印が見やすいです。ただし、岩は見た目以上に大きく、アイゼンをひっかけやすいです。景色に気を取られずに、一歩ずつ慎重に進みます。

左側は稲子岳です。北八ヶ岳では珍しいクライミングの対象ですね。赤岳などを登っているときは硫黄岳に隠れて見えない光景なので、あんな勇ましい岩壁になっているのか!と驚きました。

さあ大変な登りに差し掛かりました。体重移動を意識しながら、なるべくジグザグに進んで筋肉への負担を減らして登ります。それでもきつい上り坂ですが、長くないのが救いです。

後ろを振り返ると、北八ヶ岳の峰々が一望でき、左奥の丸い蓼科山から中山峠までぜんぶ見渡せます。

これを見ると、いつか1週間くらい時間をかけて八ヶ岳全山縦走してみたいな、という気持ちになります。

正面に霧ケ峰高原、右側は蓼科山です。肉眼でよーく目を凝らすと霧ケ峰の丸い気象レーダーが見えます。

ほぼ白・緑・青の景色ですが、それぞれのコントラストが美しく、澄み渡る空に浮かぶ遠景の北アルプスオールスターが幻想的で見事です。

あの特徴的な岩のコブが頂上かと思いますが、あれのちょっと奥が山頂です。右奥には西天狗岳へ続く道のりが見えます。

もう一息ですが、一歩一歩が重い!

あれだけ遠くに見えた西天狗岳の頂が目前に!斜面は意外と角度がついていて、稜線上の斜面は慎重さが求められます。

あの稜線を歩けるんだ!という期待感が緊張感を薄めてしまいます。

頂上まであと一息です。後輩が先陣を切って登っています。

実はこの辺から足に違和感があり、ラストの登りが尋常ではないほどのキツさに感じました。

一歩一歩着実に、無心になりながら、最後に視界が開ける瞬間を待ちわびて歩を進めます。

東天狗岳登頂と、足の違和感を抱え下山

11時45分、東天狗岳に登頂。快晴の空、ちょうど良い風、そして日本アルプスを全て見渡せる極上の風景が眼前に広がり、見たい景色を全て叶えてくれる最高の場所です。

赤岳を筆頭に、硫黄岳、阿弥陀岳、そして南アルプスが見えます。北八ヶ岳と南八ヶ岳では、夏沢峠を境に大きく表情を変えます。こうしてみると、南八ヶ岳の力強い山容はアルペン的な雰囲気をひしひしと感じます。

年始はあそこに登ったんだな・・と何となく回想しようと思いますが、この瞬間の景色が素晴らしすぎて集中できません。

東天狗岳から見る西天狗岳は、思ったより距離があるように感じ、それ以上に頂上付近の傾斜も気になります。西天狗岳のほうが標高が僅かに高く、東天狗岳に登頂した方が西天狗岳にも向かうケースが少なくないです。

西天狗岳の頂上にも10名ほどの登山者が見えます。この撮影の直後に中腹付近から20メートルほど滑落されている方がおり、尻もち制動で止まったので無事だったものの非常に危険な瞬間です。

東天狗岳の山頂も20名弱の登山者がおり喜悦の声を上げていた中、私ときたら山頂直前で違和感があった膝が悲鳴を上げており、西天狗岳への登頂は避け、落ち着いて下山することにしました。後輩に謝りつつ、西天狗岳へ見送った後に下山の路につきます。

下山で一番集中力を発揮した箇所はここです。うっかりアイゼンを引っかけたりでもしたら、只では済まされません。

こういう場では、前や足元もそうですが、上にも気を配らなくてはいけません。

黒百合ヒュッテまで戻ってきました。トレースがしっかりついているので、道迷いの問題なく下山できます。

昼時の黒百合ヒュッテはにぎわっており、小屋内の厨房は大わらわ。名物のビーフシチューですが、単品・ライスセット・パンセットがあるものの、ライスセットは終わっちゃっていたようです。私はホットココア(600円)をいただいたので、冷え切った体が生き返りました。

下山の路は、思ったよりも早いです。アイゼンは装着したまま、軽快に下山します。黒百合ヒュッテで十分休憩したので、足の痛みも少しずつ引いてきました。

15時12分、渋の湯登山口へ下山しました。黒百合ヒュッテからは1時間ちょっとと、非常に軽快に下山できます。下山時は、アイゼンをつけたまま登山口まで下山することをお勧めします。

私も雪山にも慣れてきたかな?と思い上がった心に、今回の東天狗岳登山で喝を入れてもらったような感覚です。いずれ、今回行けなかった西天狗岳も含めて八ヶ岳全山縦走もしてみたいなと思うと共に、今のままでは全然ダメだと自分の力不足を痛感しました。

東天狗岳は八ヶ岳の全容を一望できるだけでなく、見渡す限りの大展望が広がっており、日帰りであれだけの素晴らしい風景を目に焼き付けられるのは、東天狗岳の大きな魅力です。

コースタイム

8:23  渋の湯発

8:27 渋の湯登山口

10:26 黒百合ヒュッテ

10:45 中山峠

11:45 東天狗岳着

12:15 東天狗岳発

12:40 中山峠

12:46 黒百合ヒュッテ着

14:12 黒百合ヒュッテ発

15:12 渋の湯登山口着

目次