【日帰り登山】迎え梅雨の那須岳! 北関東に聳える雄々しき成層火山

梅雨の足音が徐々に近づいてきた6月初旬、栃木県の那須連峰の中枢に位置づけられる、茶臼岳と朝日岳に登ってきました。

那須連峰の登山は、どこまで行くかによって難易度や時間が大きく変わります。

なお、「那須岳」という山はありません。

というわけで、もうお馴染みになりつつある同じ靴担当の同僚3人と、今回初めて一緒に行く職場のパートナーを仲間に迎え入れて、楽しみながら登っていきます。

目次

登山データ

活動時期時間歩行距離累積標高コース定数
2025年6月9日(1Day)5時間22分6.4km740m16

那須ロープウェイで標高1,684mへ

6月9日の午前10時25分、那須岳の中腹にある那須ロープウェイの駐車場からスタートします。

駐車場は、平日ということもあり4割くらいの駐車率でした。

心配していた天気ですが、思ったより悪くはないです。

ただ、雲の動きが早く、朧雲が時間と共に立ち込めてくる様子に、若干の怪しさを感じました。

まずは正面にある建物からロープウェイに乗車します。

ここは山麓駅、標高は1,390メートルほどです。

こちらがロープウェイです。

ロープウェイ内は広く、111人の乗車が可能だそうです。

20分毎に運行し、およそ4分間の乗車です。

なお、紅葉の季節や休日など、激混みの場合は臨時便が出るとのことです。

10時48分、ロープウェイの山頂駅に到着しました。

一応、山頂駅の中にも軽食コーナーや大きな地形図など色々ありましたが、山頂から見える風景が気になる我々は山頂駅の内部には目もくれず、展望デッキの方へ向かいます。

標高1,684mの山頂駅からは、開放感のある風景が広がっています。

視線の下には駐車場と、鬱然たる森が広がっており、朧に包まれている光景と相まって非常に幻想的な雰囲気を感じます。

まずは茶臼岳を目指すために、そこの整備された道を歩いていきます。

今回は金時山の時に一緒に登った体力自慢の同僚、カメラが上手な同僚、大菩薩嶺に登った頭の切れる同僚がいます。

そして、今回初めて登る群馬県出身のパートナーさんは、山登りを始めたてとのこと。

そのため、ゆっくりめのペースを保って登っていきます。

荒涼とした茶臼岳へのアプローチ

さて、ロープウェイを降りて5分。

ここでは、写真が映えそうなモニュメントと、荒々しい那須岳の山容が楽しめます。

私たちもここで集合して撮りました。

道中は、細かい砂と大き目の岩が混ざった登山道となっています。

そのため、滑りやすいスニーカーよりもソールがある程度硬めの登山靴を強くお勧めします。

そして、那須岳は非常に人気の山域ということもあり、このような道案内が豊富に用意されています。

しばしば強い風や霧に見舞われる印象のある那須岳では、天候によっては道迷いが生じる懸念もあり、このような案内板は本当に有難いですね。

茶臼岳までの区間は、十分すぎるほど充実しています。

正面に映る景色は、まるで違う惑星にいるかのようなスケール感です。

圧倒的な景色に囚われて動けなくなる、不思議な感覚に見舞われました。

後ろを振り返ると、ロープウェイ乗り場を境目に、全く違う光景が広がっています。

雲がかかっていますが、遠景が幻に消えているような非日常感を実感できて、こういった景色も大好きです。

「大岩」というポイントだそうです。

どこを見てもデカい岩だらけで、登るにつれて斜度もきつくなってきます。

浮石を踏んで転倒しないよう、冷静に歩行する技術が必要です。

このように、攻撃的な形状の岩が積み重なっている場所が増えてきます。

もし雨が降っていたら、滑る岩との格闘になって尚のこと危険なので、手を守るグローブがあると少し楽になります。

ロープウェイの山頂駅・茶臼岳・峠の茶屋避難小屋の分岐点です。

ここまで来れば、茶臼岳はもうすぐそこです。

茶臼岳の中央火口を見渡せる場所に出ました。

ここまで登れば、傾斜は緩やかになって見える景色も一層ギャラクシー的な要素を感じます。

火口を横目に歩いていくと、那須嶽神社の鳥居が見えます。

ここは大己貴命・少彦名命を祀る情緒に溢れた神社です。

茶臼岳の山頂

11時41分、那須岳の主峰である茶臼岳(1,915m)に登頂しました。

こちらの同僚は去年も那須岳に登頂しており、今回のコースを企画してくれました。

この日は晴れたり曇ったりを繰り返していて、山頂に着いたときは曇りになっていました。

それでも、目の前に広がる火星みたいな景色があるだけで、この山が持つ美しさが心に刻まれます。

あれが後ろから見た那須嶽神社の祠です。

頂上にこうした祠があると、登山よりも登拝したという感覚が近いと思います。

御朱印はありません。

頂上で暫し休憩します。

カメラの上手な同僚と私は、休憩を殆ど摂らず写真を撮り続け、いつの間にかお昼を回っていました。

ここからは朝日岳への道を征きます。

どうやら、朝日岳から見る茶臼岳の姿が非常に素晴らしいとのことで、まだまだ楽しめそうな予感がします。

峠の茶屋跡避難小屋へ

12時5分、茶臼岳を後にして朝日岳へ向かいます。

ここまでの道は、ロープウェイもあって登りやすかったとはいえ、決して簡単に登れるという感じではありませんでした。

それでも、ここから先の道の方が大変だということが地図を見ただけで分かります。

最近の自分の山行としては珍しく初見の山なので、全てが新鮮で楽しさを嚙みしめながら進みます。

西側が崖になっている道を横目に進みます。

那須岳のルートは全体的に柵が設けられており、安全です。

下に視線を移してみると・・・

結構な崖になっていました。

この景色、モンブランに行った時の下山でも同じような風景だったな・・・と一人で感慨に浸ります。

なお、下の方に見える赤い屋根の建物が、今から経由する峠の茶屋避難小屋です。

下り坂がメインとなりますが、緩やかに高度を落としていきます。

ただし、大小さまざまな岩に足をとられて何度か滑ってしまいました。

自分は滑ると、最も情けない声が出てしまいます。

降りていくと、落雷注意の看板があります。

この看板自体が落雷にやられてしまったかのような劣化をしていますね。

那須岳も天候は安定しづらい山域で、今にも遠雷が轟きそうな天気がこの日は続いています。

那須岳は、これまで見てきた日本のどの山よりも、地球じゃない遠い惑星に来たような感覚が強いです。

流石、関東を代表する活火山。

こうした地形から、幾つもの時代を越えてきた大地の力強さを感じます。

はじめに目指す、峠の茶屋避難小屋が近づいてきました。

どんなタイミングでシャッターを切っても、期待を超える美景が映し出されます。

赤茶色に染まった荒涼とした地面の先に、蓊欝たる木々で染まった山肌、そして流れる雲のコントラスト。

大自然の魅力をこれでもかと詰め込んだ景観です。

12時51分、峠の茶屋避難小屋に到着しました。

ここで改めて休憩を挟みます。

避難小屋の中にはやや大きめのテーブルが2つあります。

宿泊はできませんが、じっくり腰を下ろして休むことができる有難い場所です。

みんな思い思いの食べ物で栄養を補給し、今回の第2の目標地点である朝日岳へエネルギーを蓄えます。

朝日岳への道は手汗を握るような瞬間を味わえる、ボリューム満点の道らしいです。

朝日岳へ繋がる崖上の鎖

13時35分、峠の茶屋避難小屋を発ち、朝日岳へ向かいます。

この場所のロケーションも素晴らしく、東側の展望が良いです。

霞の奥には福島県の白河市があるはずです。

避難小屋から朝日岳への道は、幅が一気に狭くなると共に、危険個所が増えます。

切り立った斜面に登山道が切り開かれており、集中して歩かないといけない場所もあります。

浮石はそんなに無い印象でした。

植物を探してみると、ヒメイワカガミが目立ちます。

小さくてかわいいですね。

なお、コマクサは未だ全然花が開いてないようでした。

華奢な花とは打って変わって、豪快な山肌が目の前に現れました。

朝日岳は安山岩が際立つ火山で、那須連峰で最も鋭利な秀峰です。

なお、朝日岳登山ルートの技術的難易度は、栃木県が出しているグレード表において、5段階評価の「B」となっています。

13時51分、恵比寿大黒というポイントです。

朝日岳まで35分らしいですが、まだまだ全然楽しめそうですね。

歩き続けていると、突然現れた奇岩に目を奪われました。

自然が創り上げた荒々しい芸術に、思わず溜息が出てしまいます。

程なくして、結構急な岩の斜面を登ることになりました。

雨が降っていないので、ソールがしっかり岩にグリップして歩けますが、岩が濡れていたら最悪です。

そして、道中から植物の気配が消えました。

急斜面を登り、一息ついたところで不意に後ろを振り返ると・・・

手前には今通ってきた急峻な道があります。

そして、それ以上に存在感がある茶臼岳の気品に満ちた佇まいが美しく、一層茶臼岳の魅力を引き立てる最高の光景です。

さて、茶臼岳の素晴らしい風景を背に、朝日岳への道に集中します。

すると、ほぼトラバースみたいなことを強いられる道に出ました。

実際の道幅はこんな感じで、人が1人通れるくらいの足場となっています。

なお、鎖はかなり安定して設置されているので安心感はあります。

それでも、高度感は十分あるので結構怖気づいてしまいます。

ある程度安全な場所まで来て、下の様子を撮りました。

誤って滑り落ちたらどうにもなりませんね。

この鎖場の区間は、大幅なアップダウンは発生しないため落ち着いて通過すれば、そこまでの難易度ではありません。

ただ、足元が細かい砂で敷き詰められているので、状況によっては非常に滑りやすい足場となるため要注意です。

鎖場を乗り越えても、急な登りは続きます。

トレッキングポールが余り役に立たないレベルで急坂となっています。

ここさえ越えれば朝日岳は目の前。

無理しないペースで頑張って登って行った先に、とうとう見えてきました。

那須五岳唯一の鋭峰 朝日岳

14時20分、遂に朝日岳が見える分岐点まで辿り着きました。

ここは、三本槍岳と避難小屋方面の交差点となっています。

そして、茶臼岳の方向を振り返ると、一幅の絵のような茶臼岳が視界を埋め尽くしています。

これが見たかったから、あそこに見える山頂から歩みを進めてこの場所まで来たんだと思うと、万感の思いで気分が高まりました。

14時27分、朝日岳(1,896m)登頂です。

ここは那須岳唯一の鋭峰で、嶮峻な山容が多くの登山者を引き付ける、茶臼岳とは異なった魅力を持った山です。

なお、朝日岳登頂後から殆ど晴れ間が消えました。

気が付けば14時半を周っており、那須岳に

「時間切れですよ」と言われているかのように、雲の霞幕が私たちの前を覆いました。

そして、あの急な斜面と鎖場を下山でもう一度越える必要があるので、休憩はしっかり取って下山に向かいます。

山麓駅までの下山道

朝日岳の山頂で10分程度過ごし、下山します。

良い感じに視界が雲に覆われてくれたおかげで、目の前の地面だけに集中できます。

みなさんはちゃんと登山靴を履いていますが、自分だけトレランシューズを履いてきていて、足元が安定しません。

そのため、下山では自分が一番遅いペースになります。

この日のメンバーはシューズのメーカーも様々で、

スポルティバのトランゴアルパイン

マムートのノバツアー

アクのアルバトレック

メレルのモアブ

サロモンのセンスライド

という感じでバラバラでした。

那須岳は、天候やその人のスキルにもよりますが、茶臼岳までならハイキングシューズ、朝日岳含めその先まで行くならトレッキングシューズで行くと登りやすいと思います。

15時20分、峠の茶屋避難小屋まで戻ってきました。

外観はこんな感じで、結構年季が入っているように見えますが、先ほど見た通り内装はとても綺麗です。

峠の茶屋避難小屋からは、那須岳の中腹を横切るような形で下山します。

見た目以上に道幅はしっかり広く、割と安全ですが油断は厳禁。

前回の奥穂高岳でも回想しましたが、山行を良い思い出で終わらせるためにも、最後の最後まで気を緩めずに下ります。

下山道からも、朝日岳が見せる圧巻の斜面を楽しめます。

下の方に人工物の何かがあります。昔は人工鉱山だったため、その遺産の可能性があります。

下山道は一本道なので迷うことはありません。

ただ、茶臼岳は見た目通りの巨体を誇っているため、距離はあります。

しばらくは土の地面をゆっくり高度を落としながら歩き続けましたが、徐々に周りの環境が変化していきます。

歩けば歩くほど、周りに緑が溢れるようになりました。

登りでは、ロープウェイで一気に300メートルくらい標高を上げたので気づきませんでしたが、徐々に周りの植生に変化が出る様子は、見ていて非常に面白いです。

山行の終わりが近づいてきました。

周りの木々や植物がアーチを描いていて、出口まで案内してくれているように見えます。

ちょっと前まで豪壮な朝日岳の姿を見ていたので、そことのギャップで心が洗われました。

16時7分、那須ロープウェイの駐車場に戻りました。

これで今回の那須岳登山は完了です。

今回の登山を振り返って、なぜこんな素晴らしい山に今まで注目してこなかったのか、という思いが沸々と湧いてきました。

那須岳は紅葉の季節になると、信じられない絶景に多くの観光客を魅了する人気の山という噂ですが、梅雨前の季節でも十分楽しめます。

前述しましたが、日本のどの山よりも異星に来た感覚と、独特の空気感を感じることができます。

そして、今回一緒に登ってくれたメンバーのおかげで、最初から最後まで楽しめる登山となりました。

単独行をすることが少なくなった今、何人かと一緒に登る登山の魅力を味わえるのは非常に幸せなことです。

次は山装う季節に訪れ、この素晴らしい山を新しい視点で楽しめたらいいなと思う山行となりました。

コースタイム

6月9日

10:25 那須ロープウェイ山麓駅

10:48 那須ロープウェイ山頂駅

11:41 茶臼岳着

12:05 茶臼岳発

12:51 峠の茶屋避難小屋着

13:35 峠の茶屋避難小屋発

13:51 恵比寿大黒

14:20 朝日岳分岐

14:27 朝日岳

15:20 峠の茶屋避難小屋(下り)

16:07 那須ロープウェイ山麓駅着

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