標高2,956メートル、この高さなのに日帰り登山が可能な木曽駒ヶ岳に、テント泊で贅沢に堪能させていただきました。
木曽駒ヶ岳はロープウェイで標高2,600メートルまで登る事ができ、登山だけではなく、千畳敷カール周辺の散歩やトレッキングなどで賑わう老若男女に大人気の中央アルプス最高峰です。
今回、木曽駒ヶ岳はもちろん、宝剣岳と伊那前岳にも登頂し、テント泊だから味わえる最高の景色を味わい尽くす山行となりました。
登山データ
活動時期 | 時間 | 歩行距離 | 累積標高 | コース定数 |
2023年8月4日(2Days) | 6時間44分 | 6.8km | 645m | 15 |
1日目:ロープウェイで千畳敷へ
8月4日、11時27分にしらび平のロープウェイ乗り場に到着。この時間にロープウェイに乗る乗客の方は、千畳敷付近でハイキングをする方と、テント泊をするような装備の方が多いように見受けられました。
ロープウェイで登っている最中は真っ白でほとんど何も見えず、およそ7分後、千畳敷駅へ到着。
中央アルプスを代表する景観、千畳敷カールが目の前に広がっています。
この日はガスに包まれており、風も弱いので雲が取れない一日になりそうです。
12時15分にスタート。少しずつガスがとれ、晴れ間が見えてきました。
木曽駒ヶ岳に登る際に一番大変なポイントは、目の前にある乗越浄土までの急坂を登り切ることだと思います。
緑だらけですが、何百色もあるような彩りが広がっています。
12時28分、千畳敷駅登山口に来ました。ここまではハイキングで家族連れの方や年配の方なども含めて散策できる道でしたが、ここからは立派な登山ルートです。
以前一度木曽駒ヶ岳に来たことがありますが、休日は登山道も非常に混雑してしまうので平日に訪れることをおススメします。
乗越浄土までの道は割と急ですが、滑るような道ではありません。それでも、道を外れると岩が積まれているような道が目立ち、下手をすると落石につながるので全然油断はできません。
ある程度乗越浄土に近づくと、つづら折りになりますが道も狭くなります。混雑したときは譲り合いが必要ですね。
ガスが下の方を覆っているので、あまり高度感は感じません。むしろ必要以上の暑さを感じることがないので、割と快適に登れています。
乗越浄土まであと少し、この付近は人工的に階段が設置されている箇所があります。
割と歩きやすい道で、特に下りはありがたいです。1歩の幅が小さくなるように設計されているので、転倒の心配が減ります。
1日目:乗越浄土から頂上山荘へ
13時2分、乗越浄土に到着。ここまで来れば、急登というような箇所は山頂までありません。
風もそこまで強くなく、日差しもないので快適ですが、眺望はあんまりです。
中岳方面、なだらかな斜面と、中央アルプスらしさ全開のカールが目を引きます。
時折非常に細かい雨がパラパラと降りますが、本降りにはならなさそうなので、レインウェアは着用しません。
宝剣山荘です。一応ここにもテント場はありますが、頂上山荘の方が広いうえに完全予約制なので、今回は少し休憩するだけです。
あまりのんびりしていると雨が強くなる心配があるので、いそいそと宝剣山荘を後にし中岳へ向かいます。
ツアーで登られている方々の後に続く形で、中岳山頂へ。
13時33分、中岳登頂。一面真っ白で展望はないですが、テント泊なので今日がダメでも明日に期待できます。
乗越浄土さえ越えれば、中岳まで比較的安全に登ることができます。ただし、道が広めなので、深い霧に包まれた場合はルートを外れることがあるので、地図もしくはGPSは必須です。
中岳からは、ゆるやかな下りを経て頂上山荘へ。すでに数十張りほどテントが張られています。
そして、ここから木曽駒ヶ岳の山頂も確認できます。こうしてみると、割と楽に登れてしまいそうに見えてしまいますが、近づいてみると、頂上が意外と遠い・・・。
13時42分、駒ヶ岳頂上山荘に到着。平日ですが、テント場も賑わいを見せています。
2,900メートル地点に、こんな解放感のあるテント場で夜を明かせると思うとテンションが上がります。晴れていれば、もっと素晴らしい光景が望めるはずです。
こちらが頂上山荘です。テントを張る前に受付をし、お手洗いと水場の説明を受けます。
水場は小屋の前に蛇口があるので、そこから確保します。
この後、晴れ間も見え始め天気が大きく崩れることはなさそうだったので、テントを張ったあとに木曽駒ヶ岳山頂に向かいます。
山荘から頂上へ行く方法は主に2つあります。明日の朝一も登る予定ですが、この日は山頂の東側から向かいます。大きな岩が無造作に転がっていて、岩と岩の隙間も大き目になっています。
15時7分、木曽駒ヶ岳(2,956メートル)登頂!
山頂には標識があり、薄く「標高二九五六m」と書かれていています。かなり年季が入っているようで、全然読めません。
雲の迫力が凄く、山頂で見えたのは夏らしさ全開の壮大な光景でした。
この日、遠景は見えませんでしたが、これも山の醍醐味のひとつ、雲と同じ高さから雲を眺めることで、非日常を感じることができます。
明日再び山頂に向かうので、この日はあまり山頂に長くとどまらず、テント場へ戻ります。
18時のテント場からの景色。一番奥に巨大な雲が見えます。
快晴で遠くまで見通せる景色も素晴らしいですが、こういった巨大な雲が遠くに見える景色も乙なもので、個人的には一番心に残りやすい景色です。
この直後、サーッと雨が降ってきたため、早々にテントに戻り体を休めます。千畳敷駅からは2時間くらいで頂上山荘に行けるので、体力も足も余裕があり、幸せを噛みしめながら就寝。
2日目:2,956メートルから見る大雲海
翌朝4時20分、写真がブレていますが、夜明け前のテント場です。
すでに雲海が広がっていて、頂上からはどんな景色が見えるのか、期待に任せて頂上にどんどん向かいます。
まだ夜明け前のこの時間、テント場を振り返るとカラフルなテントがだんだん小さく見えますが、頂上はまだ先です。
奥を見ると、南アルプスの峰々と、富士山の頭がほんの少しだけ見えます。
午前4時33分、昨日に引き続き2度目の木曽駒ヶ岳頂上です。
さあ、ここからは夜明けを待つ至高の時間。思う存分心に焼き付けたいと思います。
東の空が明るくなると共に、雲の海が絨毯のように広がっています。
こんなに綺麗な雲海はなかなか見ることができないので、ため息が出てしまいます。それほど最高の景色です。
こういう雲海が広がっているとき、下界ではどんな天気になっているのかが滅茶苦茶気になります。
3,000メートルにほど近い場所ですが、風も落ち着いており、絶好の環境で目の前の景色を噛みしめています。
多くの方が、山頂から東の方向を向いています。
頂上は十分な広さがあるので、皆さん思い思いの場所から最高の瞬間を待っています。
午前5時8分、八ヶ岳の奥から太陽が昇ってきました。山登りをしていて最も心が洗われる瞬間です。
自分の目線より高い場所に雲がなく、目線の下に雲が敷き詰められている、という非日常感が最高です。
北西方面を見ると、御嶽山が雲海に浮かんでいます。
穂高連峰や八ヶ岳など、いろいろなところから御嶽山の姿を見ることができますが、木曽駒ヶ岳から見る御嶽山は距離的にも近く、その存在感が際立ちます。
南アルプスと、最奥に富士山が見えます。この様子だと、この日は北アルプスから南アルプスにかけて、どの場所から見ても素晴らしい雲海を見る事ができた日だと思います。
広角レンズを活かして、この大パノラマを撮影。どこを切り取っても絶景が映るので、相当贅沢をしている気分になります。
北アルプス方面。これだけ雲海に囲まれていると、別世界に神秘的な島が浮かんでいるような風格があります。
自分にとって、これ以上の目の保養はありません。
岐阜方面です。御嶽山と、雲海の下には大滝村や下呂市があります。少しずつ雲海が晴れてきました。360度、どこを見ても大雲海が広がっている素敵な風景を堪能させていただきました。
また、手前には頂上木曽小屋がありますが、営業しているかどうかは電話で確認が必要です。
見渡す限りの絶景を愉しみ、至福の境地に至りましたが、次なる絶景を求めてテント場へ下ります。
ここからは、中央アルプスでひときわ目立つ宝剣岳と、知られざる絶景の宝庫、伊那前岳へ向かいます。
2日目:険しさ際立つ宝剣岳
テント場まで戻ってきました。8時までに撤収する必要があるので、それまでに撤収作業を完了させて宝剣岳へ向かいます。
中岳を越え、宝剣岳がはっきり見えてきました。
昨日はほとんど宝剣岳の雄姿を見れなかったぶん、気分が昂っています。
宝剣山荘の前に荷物をデポし、宝剣岳へ向かいます。
現在7時19分、風も殆どないため、宝剣岳へ向かうには最高の条件です。
晴れていると、どの道を進めばいいか分かりやすいですが、霧や雨の場合は道を誤ってしまう危険が常に付きまといます。
また、特に休日は混雑するポイントとなるため、ヘルメットやグローブを着用し、万全の状態で登るようにしましょう。
宝剣岳に向かううえで、鎖は最高の安心材料です。鎖に100%身をゆだねるのは危険ですが、ここはかなりしっかりしている鎖なので、有効に使うために薄手のグローブがあると良いですね。
大きな岩の間を縫うように進んでいきます。鎖を辿っていく道は落石の心配は薄いですが、それでもノーヘルは危険です。
場所によっては、鎖よりも三点支持で岩場を登っていった方が楽なところもあります。
一部区間、ほぼ垂直に登る場所もあります。この先は相互通行ができない場所なので、できるだけ声をかけあって、安全が確認できたら進んでいきたい所です。
宝剣岳頂上直下、ここが相互通行できない場所です。宝剣岳の山頂は広くないので、場合によっては下りを優先させたほうがいいです。
特に休日は混雑が裂けられない場所なので、声をかけあいながら進んでいきましょう。
後輩が先陣を切って進んでいます。岩場は安定しているうえに鎖も信頼できますが、足が置きづらい場所もあるので、一歩一歩集中して進みましょう。
7時41分、宝剣岳(2,931メートル)登頂!
この岩は裏側から登ることができます。千畳敷駅からも、木曽駒ヶ岳山頂からも目立つ威容は、多くの登山者を惹き付けます。こんなに快晴の空の下で宝剣岳に登頂できる機会はなかなか無いので、この景色を胸に刻みます。
宝剣岳から千畳敷駅、そして遠方には南アルプス(とギリギリ富士山)が見られます。
視界に映る緑・白・青の色彩が本当に鮮やかです。自分がどんなに絵が上手かったとしても、この景色を再現することはできないでしょう。
この日は土曜日、時間が経つごとに登山者の方が増えていくので、絶景を堪能したらいそいそと宝剣山荘へ戻ります。
2日目:伊那前岳から見る絶景カール
宝剣岳の登頂を果たし、宝剣山荘へ戻ります。
ここからは、伊那前岳へ向かいます。5年前に木曽駒ヶ岳を訪れた際、伊那前岳から見たカールの光景が忘れられず、今回の山行の最後に行くと決めていました。
伊那前岳には、乗越浄土から20分~30分で向かうことができ、標高の高低差もそこまで大きくないため、もし体力と時間に余裕があればぜひ訪れてほしいところです。
個人的には、中央アルプスのほぼすべてを目に焼き付けることができる、知られざる名勝だと思います。
少しだけ道幅が狭くなる場所がありますが、基本的にはそこまで危険な箇所はありません。
強いて言うなら、南側に見える絶景に見とれて転倒してしまうことは有り得るので、山頂に着くまでは集中して進んでいきましょう。山頂には素晴らしい景色が待っています。
8時24分、伊那前岳(2,883メートル)に登頂!誰も山頂にいません。
あまり知られていない山ですが、今後何度木曽駒ヶ岳に登ったとしても、必ず来るであろう場所です。
ここから見えるカールが最高!自然が創り出した造形美を、隅々まで味わえる素晴らしい場所です。しばらくこの場所で中央アルプスの風光明媚な光景を見渡します。
北アルプスの華々しさ、南アルプスの奥ゆかしさの影に隠れがちな中央アルプスですが、中央アルプスならではの自然美は脳裏に焼き付く魅力があり、自然風景が好きな方に真っ先におススメしたいところです。
最後に空木岳方面を見つめます。実はまだ一度も行ったことのない空木岳、いつか絶対に挑戦したい山です。
向こうから見た木曽駒ヶ岳の景色に思いを馳せながら、下山するために乗越浄土へ戻ります。
乗越浄土から千畳敷駅へ下山。この時間は、まだ思ったよりも混んでいません。
たまに、ロープウェイの状況などを知らせるアナウンスが、この山域に響き渡ります。なお、ロープウェイは17時が最終ですが、土日は遅い時間になればなるほど混むらしいので、早めに利用するように、とのことです。
剣ヶ池から、昨日はよく見えなかった千畳敷カールを見上げます。
ここからの景色は、春夏秋冬で全く違う光景になることで知られていて、特に秋は紅葉で爆発的人気を誇っています。
個人的には、秋もいいですが冬の風景を見てみたいな、と思います。
10時5分、千畳敷駅に戻りました。ほぼ予定通りの時間で下山完了。
ここにきてちょっと雲が湧いてきて、時折視界が真っ白になるときがありました。この季節は丸一日晴れることは少なく、朝一は晴れるものの10時すぎから曇り始める事が多いです。
木曽駒ヶ岳で絶景を見たい場合、ぜひ小屋やテント泊で朝の絶景を狙うのをおススメしたいです!
改めて振り返ってみると、自分が見たかった景色を超える光景を目の当たりにし、ワクワクしっぱなしの山行でした。
木曽駒ヶ岳はアクセスの良さだけでなく、標高の割に登山中の負担が少なめなこと、そしてアルプスの中央から見渡せる大パノラマが最高の魅力です。
すでに訪れたことのある場所でしたが、今回の山行を経て更にリピートしてしまうことは間違いありません。次は夏以外の季節に訪れて、中央アルプスの別の表情を見てみたい!と強く感じました。
8月4日
11:27 しらび平駅着
11:54 千畳敷駅着
12:15 千畳敷駅より登山スタート
13:02 乗越浄土
13:33 中岳山頂
13:42 頂上山荘着(テント設営)
15:07 木曽駒ヶ岳山頂(1日目)
15:30 頂上山荘着
8月5日
4:20 頂上山荘発
4:33 木曽駒ヶ岳山頂(2日目)
6:02 頂上山荘着(テント撤収)
6:42 頂上山荘発(宝剣岳方面へ)
7:01 中岳山頂
7:41 宝剣岳山頂
8:24 伊那前岳山頂
9:04 乗越浄土
10:03 剣ヶ池
10:11 千畳敷駅着
10:40 しらび平駅着