【山小屋泊登山】富士山で最もつらい!標高差2,375メートルの御殿場ルート

言わずと知れた日本一の標高を誇る富士山、主要なルートが4つ(吉田口・富士宮・須走・御殿場)ありますが、その中で最もハードだと言われている御殿場ルートから山小屋泊で登頂しました。

富士山には、「一度も登らぬ馬鹿、二度登るも馬鹿」と昔から言われています。一度も登らないのは勿体ないが、二度登るほど楽しい山でもない、ということらしいです。今回2度目の富士山登山になりますが、馬鹿と言われても全然良いです。むしろ、4つもルートがあるので4回は登ってみたいと思わせる不思議な魅力があります。

ただ、御殿場ルートはとにかく長い!特にのぼりは、もはや修行と言って差し支えないルートです。

目次

登山データ

活動時期時間歩行距離累積標高コース定数
2023年8月7日(2Days)9時間34分17.8km2,374m52

雨のち晴レルヤの地獄登り

午前7時30分、御殿場駅1番乗り場からバスに乗って新御殿場口5合目に向かいます。バス停の手前には御殿場口まで行く人用に、窓口から往復券(1,900円)が買えます。

バスに揺られておよそ30分、8時6分に新御殿場口5合目に到着。富士山保全協力金1,000円を担当の方にお支払いし、十分な準備運動を終えたら、奥の登山口から出発!

最序盤は、このように火山らしい黒い砂に覆われた道です。傾斜はゆるいので、歩きづらさは感じません。

歩き始めてすぐ、最初の休憩所である大石茶屋です。ただし、次の休憩所は遥か遠くなので、お手洗いなどはココで済ませておきましょう。椅子やテーブルも大量に置いてあります。

大石茶屋をあとに歩き始めると、上双子山・下双子山が見えます。まん丸の形で非常に可愛いですが、その上に見える怪しい雲が、一気に余裕をかき消していきます。

富士山はこのようにルートの案内板がふんだんに設置されており、御殿場ルートは登りと下り合わせて100本以上の案内表示があります。御殿場ルートは緑色ですが、他のルートでは色が違います(吉田口は黄色・富士宮は青色・須走は赤色)。

新御殿場口から出発しておよそ1時間、砂が深くなり、やや歩きづらくなりました。5合目でバスを降りたとき、半数以上の方が外国の方で、ものすごい勢いで登られる方もいれば、写真を撮りながら極めてゆっくり登られる方もおり多種多様です。

次郎坊、標高は1,920mほどで、全然先が見えないので不安になります。道はすっかり霧に包まれ、無機質な砂の道が見えるだけです。

ずっとこのような道が続きます。景観も変わらず、道も変わり映えしないので「二度登るも馬鹿」は本当にそうなのかも・・・と思い始めてしまうほど単調です。

何といっても、歩きづらすぎる!1歩踏み出しても、砂に足を取られて思ったように進めません。正直御殿場ルートで最もしんどかったのはこの地面を歩いている時でした。

誇張抜きで、ストックがあると5倍は楽になります。

雨が降りしきる中歩き続け、新6合目の半蔵坊に到着。新5合目からおよそ3時間もかかってまだ6号目なのか・・・

と、目が点になってしまいました。休憩なしで登り続けます。

さきほどは新6合目でしたが、あそこから30分ほどで6合目に到着。新6合目から6合目に進んだところで、全く進んでいる気がしませんね。

それでも、2,830mまで来たのだと思うと、背中を押されます。

11時58分、3,000m手前付近で突然空が晴れ、今まで拝むことができなかった頂上が姿を現しました!

雨雲は抜けたので、急いでザックカバーの水滴を払い、レインウェアを収納します。

標高3,000mです。スタート地点の標高が1,440mくらいだったので、すでに1,500mも上げてきたことになります。

ずっと霧や雨の中だったので気持ちも上向き、ようやく日本一の山に登っている自覚が出てきました。

晴れてくると、富士山の圧倒的なスケール感に感動します。3,000mもあるので、お昼を過ぎても暑さはあまり感じません。

日の出館手前まで来ました。地面も玄武岩が目立つようになり、先ほどまでの道とは打って変わって歩きやすくなります。

なお、下山時に向かう大砂走りの分岐でもあります。

大砂走り方面は、下山時に見る看板があります。辺りが霧に包まれていたり、雨が降っていたりすると、見落としてしまう可能性もあります。

砂走館の前に、わらじ館があります。中から活気の良い声が聞こえます。

ここは電話予約だけでなくWebでの予約も承っているので、外国の方がネットを通じて予約しやすい事も魅力ですね。

わらじ館から3分、砂走館に到着。赤岩八号館とは同じ系列で経営しているので、電話予約時に赤岩八号館が一杯だったときに、砂走館への宿泊を提案していただけます。

砂走館前はこのようにベンチやテーブルが置かれており、一休みするには最適の場所です。平日ということもありますが、御殿場ルートは全体的に登山者の割合が本当に少ないことを実感します。

さあ赤岩八号館までラストスパート。目標地点が見えているだけで前に進む気概が湧いてきます。

鉄分を含んだ赤茶色の砂や岩が目立ち、この光景は富士山でしか味わえないので噛みしめながら進みます。

13時7分、今回お世話になる宿「赤岩八号館」に到着です。最後はちょっと曇りましたが、後半は素晴らしい景色を楽しみながら登れたことに感謝しつつ、倒れるように宿に滑り込みます。

この時間、まだ自分以外に宿泊者がいませんでしたが、15時あたりから徐々に宿泊者が増えてきました。

今日はド平日ということもありベット3つに対して1人寝れるような感じでしたが、土日は満杯なので砂走館への宿泊をお願いするスタッフさんの対応が多かったように感じます。ちなみにスタッフさんはかなり優しい方で、英語が堪能な方もいらっしゃったので外国の方への対応もスムーズでフレンドリーな感じでした。本当に安心感があります。

日本一の頂へ

翌朝4時5分、東の空が少し明るくなり始めた頃に赤岩八号館を出発。

ご来光を山頂で迎えたい方は、2時くらいに出発されていました。

標高は3,400m。吉田口ルートは登山者のヘッドライトでギラギラだと思いますが、御殿場ルートは人が多くないので、ライトの明かりは見えません。静かな山歩きが堪能できます。

4時半を過ぎると空の色も明るさを増してきます。御殿場ルートからご来光を見るには、富士山の頂上もしくは赤岩八号館付近がベストです。それ以外の道中では、山の斜面から日が昇る格好になるため、富士宮ルートほどではないですが、登山道でご来光を見るのには、やや適していないルートなのかもしれません。

4時44分、もうヘッドライトは消して大丈夫なほど明るくなりました。このように登山道はガラガラで、自分のペースで登ることができます。これは御殿場ルートの大きな利点ですね。

東側の斜面、雲海と夜明けの鮮やかなオレンジ色の空に見とれてしまいます。山頂まではあと20分ほどですが、日がすでに昇っているのか、または高い雲に遮られて未だ昇っていないのか、ここからでは分かりませんが、この瞬間の空が一番美しい色合いをしています。

しかし、頂上付近はガスに覆われており、ご来光を見られるような環境ではありませんでした。

それでも、僅かですが登山者の賑わいが少しずつ耳に入り、日本一の頂がすぐそこにあることを実感させてくれます。

午前4時59分、御殿場口の頂上を表す鳥居です。赤岩八号館からはおよそ1時間で到着しました。達成感を全身で感じたいところですが、やはりここまで来たならば本当の日本最高地点「剣ヶ峰」へ歩みを進めます。

あの最も高い地点が剣ヶ峰、そして富士山測候所が見えます。かつては測候所に丸い気象レーダーがあったようですが、今はそれが廃止されて、気象レーダーは富士吉田市に展示されているようです。

近くに見えるようで、これが意外と遠い・・・。酸素も薄めなので、下界と同じペースで歩くことは難しいです。

剣ヶ峰へ向かうまでの最後の登りは、ほぼ全ての登山者が息を切らしながら一歩ずつ丁寧に登ります。これが結構急坂となっており、登りよりも下りでの転倒が恐ろしいので慎重に進む必要があります。

5時16分、富士山の頂上であり、日本最高地点の剣ヶ峰(3,776m)登頂。

穏やかそうに見えますが、実際は絶え間なく強風が吹き抜けています。

そんな容赦ない強風も含めて、自分が今日本一高い所にいる実感が湧いてきます。なお、平日なので割とスムーズに剣ヶ峰の写真を撮影することができたのですが、休日やお盆の期間だと、長い行列で20~30分ほど待つこともあるようです。

赤岩の下山と、宝永山からの絶景

山頂を堪能したら、来た道を引き返します。天気が良ければお鉢巡りもしたかったのですが、次来たときのお楽しみにとっておきます。剣ヶ峰から下る際、想像以上にこの道が滑るので慌ててはいけません。

名残惜しいですが、御殿場口から下山します。山頂はガスに覆われており、あまり視界は良くありません。直ぐ近くに富士宮ルートの下山道もあるので、今回のように視認性が良くない日は特に注視しましょう。

下山して間もない時は、このように下界の様子も見えず、上の様子も殆ど分かりません。鉄分が酸化しまくった赤い岩や砂が見えるのみです。逆に、視界バッチリの時よりも集中して下山できるので、このほうが有難い場合もあります。

そう思ったのも束の間、突然雲が晴れたと思えば、眼前に素晴らしい景色が広がりました。ある程度山頂に近いところは雲の中ですが、ここからの眺めも山頂と遜色ないほど美しいです。

赤岩八号館と、彼方まで広がる雲海です。頂上とは異なり、あまり風もなく下山するには最高のコンディションです。

赤岩八号館まで戻ってきました。小屋の方に御礼を伝え、下山します。ハイシーズンはちょっと混雑するようですが、もう一度行きたくなる、そんな山小屋でした。

眼下には駿河湾が見えます。他の山域だと、下界の標高がそもそも1,000m以上ある事が多いですが、あそこは正真正銘海抜0メートルなので、あの景色がある所は3,000メートルも下にあるんだ・・・という面白い感覚に囚われます。

上を見上げると、ずっと雲の中です。山頂は凄い風だったのですが、ここから見ると雲の動きが全然ないように見えます。富士山のマジックですね。

砂走館です。晴れていれば、これほど素晴らしい景色が眼前に広がります。大砂走りに向かう最後の休息ポイントとして、ゲイタースパッツも締め直して、しっかり補給してから挑みます。

7時9分、大砂走りへの分岐です。途中に宝永山にも行ける道があるので、宝永山に寄ってから大砂走りで下山します。

宝永山に向かうなら上の道で、大砂走りで下山するなら、そのまま左に向かいます。

宝永山までの道は基本的に大幅な登りがあるわけではないので、下山の際に寄ってみてもいいかもしれません。

宝永山までの道は基本的に砂の道ですが、ところどころ大き目の火山岩が転がっています。

景色に気をとられて余所見をしていると、火山岩につまずいて転倒する恐れがあるので注意しましょう!

7時38分、宝永山の山頂です。大砂走り分岐点からは、1人しかすれ違いませんでした。

山頂は広く、タイミング次第では静かな山頂を独占することができます。

山頂方面は相変わらず雲をかぶっています。それよりも宝永火口へ続く美しい斜面と、荒々しい岩崖が目を引きます。

宝永山は2,693m。山頂から1,000メートルも降りてきたのに、全然そんな感覚はありません。

また、富士宮口5合目をスタートし、御殿場口へ合流するプリンスルートも最近人気ですが、天気が良ければ宝永山にも立ち寄ってみて欲しいです!駿河湾が、よりダイナミックに見渡すことができます。

富士宮の方向も、絶景が広がっています。

ところが、景色に気をとられて大岩に躓いてしまい、派手に転倒。大事には至りませんでしたが、宝永山に「油断するな!」と喝を入れられたような気がしました。

しばらく足を止めて、いろんな方向の風景を楽しんだのちに、大砂走りへ向かいます。

豪快な大砂走り

宝永山から戻る途中に、御殿場口へ降りるための道があります。晴れていると向こうの下山道が明瞭ですが、ガスっている場合は道迷いの心配がありそうです。

御殿場ルートにおける下山の肝、大砂走りです。このように砂は結構深いので、全力ダッシュができるほど易しい道ではありません。また、ゲイタースパッツが有るのと無いのでは、爽快感が桁違いだと思います。御殿場ルートでの下山を選択された際は、ゲイタースパッツは必須レベルです。

ちょっとガスに包まれると、一気に世界が変わります。気づかないうちにロープの外に出て道を外れてしまうことがあるので、こうなったら一度足を止めて地図を確認したいところ。

登りのときは、この砂に足を取られて非常に大変な思いをしましたが、下りはノンストップで一気に下ることができてしまうので、1時間に1,000m以上も下ることができます。

ガスも晴れ、見覚えのある双子山が見えてきました。

一度地図を確認するために足を止めただけで、宝永山を出発してから30分もたたないうちに、ここまで下りることができます。

大砂走りの終わり際、大変分かりやすい看板があります。ロープの外には、フジアザミやヨモギなど色んな植物が生えているので、ロープの外に出るわけにはいきません。

大石茶屋まで来ました。登りのときは休憩するのみでしたが、下山時はお土産などをじっくり見ていきたいですね。残念ながら、今回宝永山頂上付近で一度転倒してしまったので、下山を優先します。

大砂走りが爽快すぎて、計画よりも大幅に巻いています。

8時42分、新御殿場口5合目に到着し、これにて富士登山(御殿場ルート)完遂です。当初の計画では11時に着く予定でしたが、やはり大砂走りで豪快に下ることができたので、1本早いバスで御殿場駅まで戻ることとなりました。

富士山の御殿場ルートは、とにかく体力勝負で、終始タフな登山を要求されました。それでも、この超ロングルートで登頂できた達成感と、大砂走りを大股で駆け抜けた爽快感は、最高の想い出になります。

「一度も登らぬ馬鹿、二度登るも馬鹿」と言われているようですが、この御殿場ルートの魅力に気づいてしまった今、大馬鹿者と呼ばれても良いので、絶対にまた挑戦するぞ!と強く思わせるルートです。

コースタイム

1日目

8:06 新御殿場口5合目出発

8:25 大石茶屋(登り)

11:00 御殿場口新6合目

11:39 御殿場口6合目

12:10 標高3,000m地点

12:14 日の出館(御殿場口7合目)

12:35 わらじ館(御殿場口7号4勺)

12:38 砂走館(御殿場口7号5勺)

13:05 赤岩八号館着

2日目

4:05 赤岩八号館発

4:56 御殿場口頂上

5:16 富士山山頂 剣ヶ峰

6:05 赤岩八号館着

7:01 砂走館(御殿場口7号5勺)

7:04 わらじ館(御殿場口7号4勺)

7:10 日の出館(御殿場口7合目)

7:38 宝永山山頂

7:49 大砂走り開始

8:37 大石茶屋(下り)

8:42 新御殿場口5合目着

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