【常念岳】テント泊で行く常念岳! 常念山脈の盟主から望む北アルプスの展望台

北アルプスは、華やかで知名度の高い山が連なっています。
その中でも、常念岳はピラミッドのような美しい山容が特徴で、麓の安曇野市からはその全容が望めます。
北アルプスの山はある程度登ってきましたが、常念岳はまだ登ったことはありません。

今回はテントを担ぎ、一ノ沢から常念岳へ1泊2日の山行です。
パートナーは、過去に剱岳、表銀座縦走、木曽駒ヶ岳、厳冬の西穂高岳などなど、素晴らしい挑戦を共にしてきた信頼できる相棒です。
体を酷使する猛暑に耐え、全力で挑みます。

目次

登山データ

活動時期2025年8月31日~2025年9月1日(2Days)
時間12時間14分
歩行距離16.7km
累積標高1766m
コース定数40

水が豊富な林歩き

8月31日の朝6時40分、ここは無料の穂高駐車場です。

現在、一ノ沢までの道は途中で一部道路が崩れているため、ゲートが設置されています。

こういった市内の駐車場に停めて、タクシーを使うしかありません。

7時23分、タクシーで一ノ沢までの最寄りの場所に着きました。

タクシーが入れるのはここまでです。

仮設トイレがあり、一ノ沢のトイレは2025/8/31現在使えないので、ここで用を足す必要があります。

準備運動をし、この日の目的地である常念小屋までの長い道のりに臨みます。

タクシーを降りて10分しない位の場所ですが、土砂崩れのため道路が一部崩壊しています。

この状態なので、さっきの場所からは徒歩で進むしかないです。

8時15分、一ノ沢登山口まで来ました。

アスファルトの熱をダイレクトに感じ続けて既にものすごく暑いです。

先ほど述べた通り、ここのトイレは現在使えません。

ここは標高1,260メートル。

情念小屋は標高2,450メートルくらいなので、沢に沿って1,000メートル以上も標高を上げる必要があります。

久しぶりにテントを担いであるので、すでに荷物の重さと暑さで、笑えなくなりそうです。

今回は、相棒が先頭に立って道を往きます。

力強い歩みで、後から見ていて安心感があります。

相棒の登山靴は、AKUのコネロⅢを使っています。

アウトソールはしっかり硬いですが、ミッドソールは硬さの違う素材を組み合わせて構成しているので、かなり歩きやすい作りの靴です。

道中は、このようにかなり水が流れている箇所も少なくありません。

浮いている石も結構滑るので、ハイカットの靴の方が有利ですね。

趣深い林の中を歩き続けます。

心地よい沢の音が常に聞こえる環境で、前日の夜まで仕事をしていた私にとって睡眠用BGMのようです。

いますぐ横になって寝たい気分ですが、生い茂る木々が我々を奥へいざないます。

登山道で目立ったのは、間違いなく沢の水です。

地図を見ると、この一ノ沢に沿ってずっと西に向かって登山道が伸びており、沢の音が遠くに離れることは暫くありません。

9時22分、大滝というポイントに着きました。

結構体力を消費して登ってきたのですが、まだ標高は1,610メートル。

実は翌月に、恐らく人生でトップクラスに長い山行を計画しているため、ここでへばっているようではいけません。

ペース自体はかなり良く、汗冷えも起こしていないので今のペースで先へ進みます。

付かず離れずの一ノ沢

標高を上げるにつれ、大小様々な岩が目立つようになります。

陽は木々に遮られているのにじわじわ暑さを感じるので、ミドルウェアは半袖一枚です。

ひたすら沢沿いに歩くと、大きな岩がゴロゴロ転がった河川敷のような場所に出ます。

格好の休憩場所ですが、ザトウムシがそこかしこに居ます。特に害はないです。

えらく急な階段を越えて、森の中へ足を踏み入れます。

常念岳は日本百名山の一座、人気のある山ですが、全然人がいません。

土砂崩れの影響もありますが、自分たちのペースで落ち着いて進めます。

道中は、しばらく変わり映えしない風景です。

屡々、足元が水に浸かる場所があるため、地面の様子は変化し続けます。

すでに体力は結構減っていますが、傾斜はそこまで急ではないのが救いです。

ここは標高は2,000メートル付近です。

冷たい沢が流れているため、手を水に浸してクールダウンします。

常念小屋まであと400メートルほど標高を稼ぐ必要があります。

しかし、同じような道をずっと登ってきたため体感距離は非常に長く、荷物の重さや暑さ、睡眠不足など色んな条件が相まって疲労感が半端ではありません。

胸突八丁を越えて

11時20分、胸突八丁です。

すでに足が棒のように頼りなく、前を見据える元気が減ってきました。

相棒の存在が唯一の活力となり、大変な道のりを小股で歩きます。

胸突八丁からは、階段が目立ちます。

一気に標高を上げ、沢の音がどんどん遠くなっていきます。

標高が一気に上がると、見える景色がどんどん変わっていくためテンションが上がります。

太陽は雲に隠れていますが、本当に暑い!

ここまで味わえなかった高度感に気分を踊らされ、気付かない間にペースが上がっていました。

11時39分、最終水場というポイントに着きました。

キリマンジャロの時にもLAST WATER POINTというものがあったので、それを思い出しました。

最終水場は、このように冷水が流れ出ています。

水はちょうどいい冷たさなので、これで過熱気味の腕や顔を冷やします。

稜線に出るまで、いくつかの階段を登っていきます。

沢の音はどんどん遠のいていき、足音と穏やかな風の音だけが空間に響きます。

急登という感じではないですが、暑さと距離の長さでじわじわと体力が削られていきます。

それに、眼前に見える景色がなかなか変化しないので、足取りも少しずつ重くなってきました。

山歩きは楽しいですが、そろそろ新鮮な景色が見たい!

と思っていたら、絶対に期待できそうな光景が現れました。

どう見ても、常念山脈の稜線です。

ここまで景色があまり開けていなかったぶん、気持ちの昂ぶりが抑えられません。

理想の楽土、常念乗越

12時41分、常念乗越に到着です。

一ノ沢から登ってきた標高は1,000メートルちょっとですが、それ以上に疲労感があります。

昔だったら、そのまま常念岳のピークに意気揚々と登って行ったと思います。

今は山の楽しみ方が変化したので、ピークに行くことよりも、この場所をじっくり味わうことを優先します。

目の前にある建物は常念小屋。

そして、そのバックに雄大に見えるのは北アルプスのシンボルである槍ヶ岳、そして南岳からストンと切れ落ちている大キレットに視線が釘付けになります。

こちらが常念小屋です。

テント泊の受付は、こちらで済ませます。

常念小屋はとても綺麗で、かなり安心感がある空間です。

受付の方も、疲れて登ってきた登山者を労ってくれました。本当に有難いですね!

常念岳方面は、雲に隠れてピークがすっぽり隠れてしまっています。

この日は風が弱く、雲がなかなか抜けていきません。

テント場に到着し、エアライズを設営しました。

最初はフライシートをかけずに設営。日光の熱を遮るためにフライシートをつけても、テント内は灼熱だったので山小屋内に駆け込みました。

常念小屋のテラスからは、槍ヶ岳が見えます。

ずっとあの頂を見ていると、視界から他の情報が全て消えるほど、吸い込まれるような感覚に陥ります。

テントは暑いので、涼しくなるまでこの場所でゆっくり楽しみます。

17時半、漸く涼しくなってきました。

威圧的な鼬雲に挟まれるように安曇野の市内が見えます。

非日常ならではの崇高な景色、本当に良い思いをさせてもらっています。

陽が暮れなずむ18時前、槍ヶ岳の後ろに光が隠れていきます。

黄昏の時間が、一日の疲れをすっかり癒してくれました。

陽が沈んだ後の常念岳です。

纏っていた雲はすっかり掃われ、目指す頂が見えます。

この日はかなり疲れていたため、陽が沈むと眠ってしまいました。

翌日は、日の出前に出発して山頂付近で太陽を拝む予定です。

テントの中で、あの頂から見える光景を想像しながら眠りにつきます。

朝の山頂アタック

なんと寝坊しました。

本来だったら4時には起きる予定でしたが、5時を回ってしまいました。

相棒が起こしてくれなかったら、昼くらいまで寝てしまっていたかもしれません。

早天に太陽が光を放っています。

本当ならゆっくり眺めたいところですが、相棒に謝りまくった後、山頂に向けて急いで準備をします。

5時20分にスタートします。

常念岳はデカいので、あの一番高いところが本当に山頂なのか、ここからだと分かりません。

まだ若干眠いですが、スタートするとワクワク感が湧いてきて楽しくなってきました。

5時25分、東の空に曙光が射し、太陽が昇ってきました。

まだ登り始めて5分ですが、太陽が昇る瞬間はいつ見ても浄化される感覚です。

槍ヶ岳の方向は、綺麗なモルゲンロートとなっています。

陽が高くなると見られなくなる儚さも相まって、本当に幻想的な瞬間です。

輝く槍の穂先から南岳までの道に対して、大キレットの部分はまだ影になっていて全容が見えません。

さて、常念岳までの道に目を向けると、岩が目立つ道となりました。

転倒や落石など、気を付けるべきポイントは多くありますが、この時点で膝に巻いていた包帯が解け始め、とても集中できる状態ではなくなっていました。

相棒が、太陽を抱えるように勇ましく登っていきます。

それとは対照的に、膝の包帯が解けた私はだんだんペースについていけなくなります。

このタイミングで相棒には先に行ってもらい、膝の包帯を巻きなおします。

頂上に近づくほど、大きな岩が行く手を遮ります。

手を使うほど難しい道ではないですが、安定しない岩が沢山あるので、焦ってはいけません。

こういう場面で、ソールの硬い靴が有利に働きます。

今回もスカルパのゾディアックテックを履いていて、ミッドソールが特徴的なので足や膝への負担が低いです。

間もなく頂上に着きます。

周りを見渡すと、絶対良い景色が広がっているのは分かり切っています。

これまで多くの山に登頂を果たしてきましたが、頂上が近づくこの瞬間は何度経験しても最高の感覚です。

だからこそ、こういった不安定な地面では間違いのない足運びを意識します。

さあ、これ以上高い場所がない場所に来ました。

もう相棒を待たせて10分以上経っているはずです。

申し訳ない思いがありますが、ものすごくいい顔で待っていてくれたので、この先の光景が壮観であることは間違いありません。

まだ登頂を果たしたことのない常念山脈の主、そこから見える風景を思い描いて、頂に足を踏み入れます。

常念岳からの美景

6時44分、常念岳(2,857m)に登頂しました。

常念岳に登るチャンスはこれまで何度もありましたが、今回が初登頂です。

というわけで、山頂からの景色を堪能させていただきます。

槍ヶ岳から、大喰岳・南岳・大キレット・北穂高岳・奥穂高岳という、北アルプスのスーパースター軍団です。

日本の標高トップ10のうち、4座が目の前に連なっています。

あの稜線を綺麗に眺めるには、最高の場所です。

見るだけで胸が熱くなる、そんなパワーを持った感動の光景です。

正面には、山に包まれるように涸沢カールがあります。

そして、奥穂高岳

あの場所は、残雪期のときに想像以上の苦労をしながら登頂を果たした、思い出の場所です。

こうして違う頂から見ると、その時の情景が脳に駆け巡ります。

視線を南側に移すと、蝶ヶ岳が見えます。

常念岳と一緒に縦走路として通るパターンが多いですが、それはまた次の機会に。

槍~奥穂の稜線とは異なり、緑溢れる素晴らしい道です。

裏銀座方面も明瞭に見えます。

北アルプスの多くが見渡せる最高の環境、山頂で会った数人の登山者と最高の景色を堪能しながら、何枚も写真を撮ります。

気持ちを爆発させたくなるような風景、ずっと見ていたいですが、暑くなる前に下山します。

この日は、常念小屋でテントを撤収し、そのまま一ノ沢への下山となります。

感動の余韻

7時ちょうど、名残惜しいですが下山します。

登りの時に十分味わいましたが、下りでは神経を使うような慎重な足運びが重要です。

下に見えるのが常念小屋です。

テントは、我々のテント以外はすでに撤収されているようです。

なお、正面に見えるのはパノラマ銀座の稜線です。

横通岳、東天井岳の先に、巨大な大天井岳があります。

下山では、浮石に注意しながら慎重に下ります。

常に視界には最高の景色が見渡せるので、それに気を取られて痛い目を見たことが何度もあります。

旅の思い出を最高のまま終わらせたいので、余韻に浸りながらも、心は冷静に下ります。

さて、テント場に戻ってテントをのんびり撤収。

開放的な景色から、叢林の世界へ戻っていきます。

華やかな景色とは打って変わり、生命力溢れる森を往きます。

昨日よりも鳥の鳴き声や虫の姿も活発に見えます。

下山中、雲がものすごい勢いで駆け上がっていきます。

ミストみたいで一見涼しそうですが、実際は蒸し焼きになっています。

早く水場のある沢沿いへ下りたいですね。

10時をまわって、水場のあるところまで下ってきました。

ここまで下れば、あとは比較的緩やかな道となります。

来た道を戻るだけなので、たまに稜線から見た素晴らしい景色を回想してしまいます。

この日は平日なので、すれ違った人の数が極めて少ないです。

このようにベンチも独占できます。

常念岳は日本百名山の一座ですが、一ノ沢から簡単に入れなくなった今の状態では、静かな山歩きが楽しめます。

長い長い下山道、膝はすでにおかしくなっています。

それでも、さっきまで見ていた北アルプスの壮大なパノラマが脳から離れず、充足感が凄いです。

下山道が長いほど、余韻に浸れる時間も長くなります。

11時46分、一ノ沢登山口に戻ってきました。

ここから先は、道路を戻ってタクシー乗り場に行きます。

ホッとした気持ちもありながら、早く思い出を振り返りたい気持ちもあります。

常念岳は、麓の安曇野から見えるピラミダルな山容が見事ですが、山頂から見た360度の壮大な絶景には心を掴まされました。

最高の絶景は、しばらく余韻として脳に残り続けています。

次に常念岳を目指すのであれば、パノラマ銀座で体を酷使した状態で挑み、更なる思い出を作りに行きたいと思います。

山行前は膝を痛めてモチベーションが微妙でしたが、実際に登ってみると気分が最高潮まで達した、最高の山行となりました。

コースタイム

8月31日

7:23 タクシー降車場所

8:15 一ノ沢登山口

9:22 大滝

11:20 胸突八丁

11:39 最終水場

12:41 常念乗越

12:44 常念小屋着

9月1日

5:20 常念小屋発

6:44 常念岳山頂着

7:00 常念岳山頂発

7:43 常念小屋着

8:45 常念小屋発(下山)

11:46 一ノ沢登山口

12:17 タクシー降車場所

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