【笠ヶ岳①】長大な笠新道を往く テント泊で1泊2日の笠ヶ岳ピストン

北アルプスの三大急登に入っていないものの、それ以上にきついと言われることもある笠新道。多くの登山者の膝を苦しめてきたロングルートに、テント泊の装備を担いで登ってきました。

そして、笠新道が多くの登山者の顔を歪ませてきた理由と、それを超えた先の至高の風景を目の当たりにし、その魅力を存分に味わうこととなりました。

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登山データ

活動時期時間歩行距離累積標高コース定数
2023年9月24日(2Days)15時間24分20.7km2,195m50

超ロングな笠新道の洗礼

9月24日の午前5時35分、新穂高温泉からスタート。

お手洗いや登山届の提出など、いろいろ準備してから左俣方面より出発します。

新穂高温泉から15分程度林道を進んでいくと、このようなゲートがあります。登山届はここでも提出が可能です。

笠新道までの道は、ほぼ平坦な道を川沿いに進んでいきます。

こういう道を見ると、上高地から横尾までの長い道のりを彷彿とさせますが、笠新道まではそれほど長くはありません。

7時2分、笠新道の入り口です。ちなみに水は枯れていました。どうやら8月半ばにはすでに枯れていたようで、この先も水場は期待できません。

笠新道は、しばしば「きつい・苦しい・しんどい」などと聞きますが、ここからその洗礼を浴びることとなります。

登り始めてすぐ、倒木が道を分断しています。左側がほんとうに滑りやすく、転倒注意ポイントです。

先の話ですが、下りで勢いがつきすぎて盛大に滑りました。

序盤こそ、凄い急登という感じではないですが、徐々に傾斜のきつさが増してきます。

序盤は樹林帯ですが、鬱蒼としている感じではなく日差しは十分に届いています。まだ7時過ぎなのに、かなり暑さを感じます。

8時10分、標高1,700メートル付近です。

ここまでの印象は、物凄い急!という感じよりも、とにかく長い!という印象です。笠新道はとにかく体力勝負、とくにテント泊の場合はゆっくりペースで体重移動を意識しながら進みます。

標高1,750メートルあたりから、少しずつ展望が開けてきます。

南東方向を見ると、焼岳と新穂高ロープウェイが見えます。

8時28分、標高1,800メートル付近です。レスキューボックスが置いてあり、救急キットやツェルトなどが入っています。

まだまだ道のりは長く、笠新道の道中半分も来ていません。体力と根気の勝負が続きます。

藪に囲まれていますが、立派な正規ルートです。笠新道の道中にはこのような道もあります。

足元だけではなく先の方も見ておかなくてはなりません。すれ違う時が一番危険です。

登るにつれて、大きめの岩が増えてきます。大岩を超えるための一歩が億劫になってきました。

一歩が大きくなると体重移動とかを考える余裕がなくなるので、余計に体力が消耗してしまいます。

北アルプスの象徴、槍ヶ岳があんなに近くに見えます。標高が2,000メートルに近づいてくると東側の展望が開け、槍・穂高連峰の雄姿が広がります。

疲れの溜まった体に、この圧巻の風景が最高の薬となって活力が湧いてきます!

上を見上げると、道のりはまだまだ遠いことが実感できます。

笠新道の入り口から登って2時間以上が経過していますが、まだ肝心の笠ヶ岳の姿を一度も見ていません。

笠新道を入った登山者は、まず杓子平というポイントまで登り、さらにもうひと登りして笠ヶ岳の稜線へ、そして笠ヶ岳へ向かうルートが一般的です。

9時45分、標高約2,100メートル地点に看板があります。岩に置いてあるような感じで設置されているので、見落としてしまう可能性もあります。

ここから振り返ってみると、槍・穂高連峰の眺めが素晴らしいとのことですが、足を止めてみてみましょう。

爽快な槍・穂高連峰の姿が見えました!大キレットもド迫力で眼前に広がっています。

一歩一歩の足取りが重苦しくなってきたタイミングですが、この絶景が背後にあることで登る気力がどんどん湧いてきます。

2,100メートル地点を超えてからは日光を遮るものがなく、晴れていれば蒸し焼きになります。

杓子平までもう少し、ひたすら長い道のりですが、笠ヶ岳の姿を見るまでは音を上げる訳にはいきません。

この日は日曜日でしたが、思ったよりすれ違った方は多くなく、杓子平まで30名くらいしか見かけませんでした。そのうち半数くらいがテント泊装備を背負っていました。こんなにきつい道なのにテント泊の装備を背負ってまで向かいたい、強い魅力が笠ヶ岳にあるのかも!そんな期待をもって無心で進んでいきます。

長い長い登りで膝が破壊されそうになり、気温の上昇と共に頭もフラフラしかけてきた時、目の前に視界が開けそうなスポットが現れました。

こんなのを見たら期待せずにはいられません。ボーっとしていた頭が一気に覚め、心を弾ませながら進んだ先に・・・

やっと見つけられました!左の高くなっているところが笠ヶ岳です。

ここが杓子平、標高は2,455メートルです。現在11時27分、笠新道の入り口から4時間25分かけてここまで来ました。

絶好の休憩ポイント、栄養と水分を十分に補給しながら、この景色を目に焼き付けます。

あの稜線の向こうはどんな風に見えるのだろう、どこまで見渡せるのだろう・・・と、想像するだけで楽しみが倍増します。

それでも、あの稜線に出るまで2時間弱の登りが待っており、全然余裕は持てません。休めるうちにしっかり休んで、次の目標地点「抜戸岳分岐」までゆっくり歩いていきます。

杓子平から抜戸岳分岐へ

杓子平で十分休憩したら、向こうに見える稜線まで向かいます。目標が明確に見えるので気分は爽快、美しい自然を堪能しながら稜線を目指して歩きます。

杓子平からの道は、最初こそ平坦で歩きやすい道となっています。それでも稜線に出るまで標高差300メートル以上あるため、無理にペースを上げてしまっては後で苦労することになります。

それにしても美しい緑が映えています。Windowsのログイン画面のような美景です。

ちょっとずつ傾斜がついてきました。杓子平までの登りが長くハードだったため、この辺りを進むペースはかなりゆっくりになってしまいます。道は岩場が中心ですが、晴れていれば特に滑りやすいこともなく、登りやすい印象です。

岩場には〇の印が目立ちます。今回は快晴なので問題ないですが、霧に包まれている場合は迷う危険があるので、頻繁に記されている〇印の有難みを感じます。

まだまだ道のりは長いですが、振り返ったときに眼前に広がる景色はどこを切り取っても最高で、飽きることがありません。

誇張かもしれませんが、この光景を見たときは天国のイメージが浮かびました。

傾斜は更にきつくなっていきます。杓子平からは1時間以上経っていますが、まだ稜線は遠いです。

さすがに休憩を途中で挟まないと膝が壊れてしまうほどの刺激があります。それでも美しい緑と、巨岩の豪壮さが際立って目の保養になるので、どんどん足が前に進んでしまいます。

稜線まであと少しですが、つづら折りになっているので目で見えているよりも長く感じます。

傾斜がゆるむ所はないですが、凄い急登というわけではないので、体重移動を意識して体力をなるべく消費しないように登っていくことができます。

13時22分、笠ヶ岳稜線に到着!もう十分登ってきました。笠ヶ岳の姿も、ちょっと遠いですが目線と同じ高さに見えます。

また、笠ヶ岳へ向かう方面の反対側、分岐を北に進むと10分ほどで抜戸岳に到着します。

少しの間休憩をはさみ、笠ヶ岳へ向かう天空の稜線へ向かいます。笠新道を超えてきた登山者にとってはボーナスタイムのような最高の時間です。

笠ヶ岳山荘を目指して

抜戸岳分岐を少し下ると、双六小屋へ向かう道との分岐があります。双六岳や裏銀座の山々は、雲に隠れてしまっているので明日の楽しみにとっておきます。

抜戸岳分岐から笠ヶ岳山荘まで1時間ちょっと時間を要します。細かいアップダウンはありますが、大きく体力を消費することはないので、目の前の素晴らしい稜線を見ながらじっくり進みましょう。

稜線の途中にある抜戸岩です。風を遮るには十分の大岩なので、強風の場合ここが安全地帯になります。

稜線歩きは最高の時間です。笠ヶ岳までの道は風もなく、道も明瞭で広めなので見た目ほど危険は少ない環境です。

向こうに笠ヶ岳山荘が見えます。テント場は、山荘よりちょっと下に位置してあり、テント場から山荘までは5分ほど歩きます。

最後はちょっとだけ登りになりますが、これを登り切ればテント場、そして笠ヶ岳山荘に到着します。

テント場には15時に到着し、先にテントを張ってから笠ヶ岳山荘で受付をしました。

水場は枯れており、水は山荘で購入できます。ただ、今年は水不足が深刻なので、雨水は1リットルまで(200円)と、500ミリリットルのミネラルウォーターは2本まで(1本500円)の購入制限があります。なお、テントは1張り2,000円です。

鬼のような笠新道を登り切り、足にかなり負担をかけてしまったのでテント場で少しゆっくりしてから笠ヶ岳に登頂することにしました。

新穂高温泉からスタートして、笠ヶ岳山荘まで9時間25分、累積標高2,000メートルのロングルートとなっており、先日登った日本三大急登の一つと言われている西黒尾根よりも間違いなく大変なルートだと感じました。

それでも、北アルプスの雄大な景色を最前列で見れたことと、杓子平からの美麗な笠ヶ岳の姿は、脳裏にしっかり焼き付きました。そして翌日、テント泊の醍醐味を全身で体験することとなります。

続きは次の記事で!

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