【笠ヶ岳②】長大な笠新道を往く 笠ヶ岳の頂と、テン場から見える最高の絶景

笠新道を登り切り、稜線を超えて笠ヶ岳山荘まで辿り着きました。足に疲労が溜まっていましたが、テントを張っている間に回復したので、笠ヶ岳山荘から10分で行ける山頂に向かい、頂からの景色を拝みます。

新穂高温泉から笠新道を伝って笠ヶ岳山荘までの道のりは、前回の記事で紹介しております。

目次

笠ヶ岳の頂上へ

9月24日の15時28分、笠ヶ岳山荘の横から笠ヶ岳の山頂へ向かいます。

山頂には15分もしないで着くうえに、荷物もデポして向かえるので気軽に向かいます。この日は風も全然なく、かなり好条件で登ることができています。

笠ヶ岳山荘からだいたい10分で、山頂が目の前に見えるスポットに到着です。

ついさっきまで重たいテントを担いでいたので、身軽になった今、超速で笠ヶ岳山頂へ向かいます。

15時39分、笠ヶ岳(2,898メートル)に登頂!

頂上はそんなに広くはなく、石が積み重なっている形になっているので、端の方に行って落ちたりしないように注意が必要です。

ここから見える景色は最高の一言に尽きます。これまで北アルプスの山は色々と登ってきましたが、かなり新鮮で長い時間見ていても全然飽きる気配がありません。先ほどまで通ってきた稜線も、こうしてみると想像以上のスケール感で圧倒されます。

奥に見える槍ヶ岳は雲の中に隠れています。

穂高の方面も雲がかかっていますが、恐ろしい大キレットが口を開けているのが分かります。

北アルプスの山は、日本の山々の中でも、特に急峻さやアルペンチックな雰囲気が目立ち、多くの登山者の憧れとなっている山域ですが、こういう景色を見ると、なぜ多くの方が北アルプスに魅了されるのかが分かる気がします。

しばらく景色を堪能していましたが、この日は裏銀座方面の景色は雲の中に隠れていて見えなかったので、そっちの方面は明日の楽しみにとっておきます。

さて、山頂から下る際は落石を起こさないように丁寧に下ります。〇の印がついているルートを少しでも外れると、崩れやすい岩が積み重なっているだけなので転倒・落石の危険があります。

雨天や、早朝などで霧に包まれている環境では特に注意したいところです。

テント場に戻ってきました。テント場の奥(稜線に戻る方向)に、帰る登山者に向けた「サヨナラ」のメッセージがあります。無機質なようで、ちょっと面白みがありますね。

笠ヶ岳のテント場は、40張くらいは入るキャパで張りやすく、風がなければ本当に快適に過ごせますが、一つ懸念ポイントとして、テント場から山荘までの距離が長いことが挙げられます。

テント場から山荘まで軽く4~5分登って向かうことになるので、お手洗いが遠いです。

この日は信じられないくらい風がなく、翌日の天気も安定するとのことで早めにテントに入り、明日の絶景を楽しみにしながら就寝しました。

明朝の大パノラマと、五彩の絶景

9月25日、5時12分のテント場からの穂高方面です。

テントから目覚めていきなりこのような景色を見れる幸せを実感します。もちろん非常に寒いので、ベースレイヤーにミドルレイヤーを2つ重ね、その上にレインウェアを着ています。

南東方向に、見覚えのある山容が小さく見えます。まさか笠ヶ岳から富士山が拝めるとは思っていませんでした。

ちなみに富士山の前には南アルプス連邦が聳えています。距離こそ遠いものの、この場所から富士山・北岳・間ノ岳・奥穂高岳・槍ヶ岳の国内標高トップ5が見えました。

5時52分、南岳付近から静かに日が昇りました。その瞬間の景色はどんな色の絵の具を使っても書き表せないような素晴らしい彩りです。

これを見るためにテントを担いで笠新道を登ったんだと言えます。

近いところから、焼岳・乗鞍岳・中央アルプス・南アルプスが一望できます。

こんな波のような峰々が一気に視界に入ってくると、多幸感で脳がおかしくなってしまいそうです。

そして、日の出の時間の笠ヶ岳山頂方面。数人が山頂にいますが、テント場や山荘からでも素晴らしい景色が拝めます。

日の光を浴びて、笠ヶ岳山荘と笠ヶ岳が鮮やかに照らされています。見渡す限り想像以上の光景を映し出してくれるので、いそいそとテントを畳みたくはないのですが、笠新道をじっくり下るために早い段階でテントを撤収し、下山します。

笠ヶ岳からの下山

6時44分、テント場をあとにし、来た道を戻ります。最後にテント場を振り返ってみましたが、多くのテントがすでに撤収されていて、各々下山したり双六岳方面へ向かったりしていました。

この日も風はほとんどなく、かつてこれほど稜線でのテント泊が快適にできたことがあっただろうか・・・と思い返してみましたが、これ以上のコンディションは無いと思います。

前日は雲に隠れていて全然見えなかった黒部五郎岳や裏銀座などの方面です。

ひとことに「北アルプス」にまとめられていても、向こうのほうは情緒が異なる印象で、個人的には槍ヶ岳や穂高連峰よりも秘境感が強い場所だと思っています。

もう少し北西方面に目をこらしてみると、なんと富山湾が見えます。まさか、と思って地図とコンパスを取り出して確認してみましたが、確かに富山湾です。

富士山から海を見たときにも思いましたが、山から見える海は特別感が段違いです。

7時42分、抜戸岳分岐に到着しました。昨日見たときにも思いましたが、やはりここから見える笠ヶ岳は頭から離れません。

青空と雲をバックに雄大に聳える姿、山の東側と西側で印象の違う非対称な山容、すべてが壮麗で魅了されました。

8時28分、杓子平に戻ってきました。抜戸岳分岐からの下りは特に危険個所はないものの、景色に気をとられて転倒することはマズいので、写真を1枚もとらずにノンストップで降りてきました。

笠ヶ岳の素敵な景色も、これにて見納めです。笠新道に入ると、笠ヶ岳の姿を見ることができなくなります。

笠新道の下りも長いので、ここでじっくり休憩してから挑みます。長大な下りで大事なのは、とにかくペースを上げないこと、膝を痛めないようにするには、これを徹底しています。

8時36分、杓子平から笠新道へ。笠ヶ岳とお別れし、しばし槍・穂高連峰を眺めながら下山します。

序盤は大きな岩で構成された道が目立ちます。ここでは特に転倒や落石に気を配り、ゆっくり下ることが重要です。

こういう岩場は、一歩一歩の幅が一定になることが少ないので膝を痛めないようにストックとサポーターを駆使して下山することをおススメします。

岩が中心のゾーンから暫く下ると、藪ゾーンです。ここでは、道迷いの懸念があります。岩場では、〇の印が岩に示されていたので分かり易かったのですが、道が藪に隠れているので誤ったルートを進んでしまうことがあります。

藪ゾーンは思ったよりも長く、ボーっとしていると全然違うところに行ってしまいます。登りのときよりも、下りのときの方が道迷いの心配が上がるので、目の前の美しい槍ヶ岳に気を取られることなく集中して降りる必要があります。

それでも時折目の前の景色に目を奪われてしまいますよね・・・

長い長い笠新道、もちろん樹林帯に入ってからも長いです。ここまでくると、あまり登山者のすれ違いが起きなくなります。そうなると、ついついペースが上がってしまいがちですが、一番滑りやすいのが、この樹林帯の土だと思いました。

せっかくここまで安全に下ってきたのに、焦って転倒・怪我しては素敵な山行が台無しなので、最後まで気を抜いてはいけません。

笠新道の入り口まで、あと少しです。下山して実感しましたが、笠新道は急登よりも、その圧倒的な長さが際立って、北アルプスの困難なルートのひとつとして名が知れ渡っているのだと思います。

登りのときよりも下りの方が足にかかる負担が大きく、下手に早いペースで下ってしまうと速攻で膝痛になってしまう懸念があります。笠新道に挑戦するときは、ストック・湿布・サポーターを携行していくことを強くおススメします!今回この3つの神器に救われました。

10時55分、笠新道の入り口に到着しました。笠ヶ岳のテント場から4時間10分ほどでここまで来たので、ペースとしては早すぎず遅すぎず、といった感じだと思います。

ここまで降りてきて、ようやく一安心。一気に緊張感が飛んでいきました。

11時52分、新穂高温泉に到着し、下山完了です。新穂高温泉はお手洗いがきれいなうえに、蛇口から出る水は飲めるので、登山者にとっては至れり尽くせりの施設です。

この付近は日帰り温泉や食事処も数多くあるので、登山帰りにぜひ立ち寄ってみてください!

1泊2日で笠新道からの笠ヶ岳を完遂するには割とハードな山行でしたが、それを激励してくれるかのような槍・穂高連峰の景色、杓子平からの歓迎してくれるかのような笠ヶ岳の佇まい、そして稜線を超えた先の新鮮な絶景、どれをとっても記憶に残る最高の山行だったと思います。

今後いろんな場所に登りにいったときに、必ず笠ヶ岳の場所を確認すると思います。それほど強烈に印象に残った登山で、この思い出も振り返りながら登山を続けていきたいと思わせる、素敵な山でした。

コースタイム

9月24日

5:35 新穂高温泉発

7:02 笠新道入り口

8:10 標高1,700m地点

8:28 標高1,800m地点

9:45 標高2,100m地点

11:27 杓子平着

11:40 杓子平発

13:22 抜戸岳分岐

15:00 笠ヶ岳テント場着

15:28 笠ヶ岳山荘より笠ヶ岳山頂へ出発

15:39 笠ヶ岳山頂

9月25日

6:44 笠ヶ岳テント場発

7:42 抜戸岳分岐

8:28 杓子平着

8:36 杓子平発

10:55 笠新道入り口

11:52 新穂高温泉着

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