【奥穂高岳①】残雪期の奥穂高岳! 変化に富む涸沢までの鉄板ルート

今回は、およそ6年ぶりの奥穂高岳に挑戦します。

それも残雪期という色々難易度が高い時期に登りに行くため、チャレンジする前から苦戦するのは目に見えていました。

それでも、涸沢カールのモルゲンロートと、日本第三位の高峰の姿を目に焼き付けたい思いを背負って、2泊3日のテント泊登山を行いました。

今回は、同じ職場でザックコーナーを担当している同僚と共に、奥穂高岳目指してクライムオンです。

目次

登山データ

活動時期時間歩行距離累積標高コース定数
2025年5月26日~2025年5月28日(3Days)22時間10分33.8km2045m56

緑が映える朝の上高地

5月26日。沢渡駐車場からシャトルバスを経て、8時4分に上高地到着。

登山届を提出し、準備運動をしたら早速出発します。

この日は涸沢まで向かうため、ちょっとロングな行程となります。

上高地周辺の地図です。

とりあえず河童橋まで向かい、今回の目標地点を確認したいと思います。

あれが河童橋。緑が映える景色の奥に、穂高連峰が見えます。

その中で最も高い地点である奥穂高岳が今回の目標地点です。

この景色を目に焼き付け、今回の山行への原動力とします。

上高地周辺は、我々のような登山者はそんなに多く居ないです。

河童橋までの道は、風光明媚な光景を求めて多くの観光客が訪れます。

そして河童橋を過ぎると、ある程度喧騒は収まり、ハイカーの姿が目立ちます。

横尾までの散策路

上高地を過ぎても、しばらくは道幅も広く傾斜も全然ありません。

眩しいほどの緑に囲まれて、気持ちのいい散策ができます。

9時51分、明神館に到着しました。

ここも景色が非常に優れているため、足を休めるには絶好のポイントです。

明神館を後にし、徳沢・横尾方面へ向かいます。

直線距離がそこそこ長いので、何も考えずに進んでいきます。

道中こんなところもあります。

地味に木の道が滑るので、登山靴の防水性を信じて真ん中を突っ切ります。

また、クマベルが所々に設置されています。

鳴らすと割とデカい音がするので、効果は抜群ですね。

10時54分、徳沢に到着しました。

道が長すぎてそろそろ元気がなくなってくる頃ですが、徳沢も良い休憩スポットです。

アイスクリームとカレーライスが有名ですが、帰りの時の楽しみにして、通過します。

徳沢を過ぎると、ほんの少しだけ雰囲気も変わり、道もやや狭くなります。

細かいアップダウンも現れてくるので、この辺は普通の登山道と言っても差し支えないです。

退屈に思われがちな道中ですが、景色が開ける場所もあります。

逆に、進行方向右側は落石注意なので、美景に見とれすぎないようにしましょう。

ここの河川敷は常時工事している印象です。

そして前穂高岳の雄姿が目を引きます。

12時14分、横尾山荘に到着です。

ちゃんと時間をかけて来ましたが、既に割と疲れました。

ここまでがハイキングコース的な道ですが、この先は涸沢方面、槍ヶ岳方面、蝶ヶ岳方面など、本格的な登山道へ続く交差点となっています。

疲労感はありますが、まだ全然序章も序章です。

まずはこの日の目的地である涸沢に向かうため小休止を挟み、重いザックを担ぎ、鬱勃たる気合いを入れて先へ進みます。

屏風岩を横目に本谷橋までの道

横尾山荘を12時40分に出発し、あの横尾大橋を渡っていきます。

奥穂高岳は実に6年ぶりで、この大橋も久々に渡ります。当時の記憶など全くありません。

横尾山荘を過ぎると、登山者の数が極端に減ります。

今回一緒に来てくれた相方が、この辺りで強烈な眠気に襲われており途中で仮眠すると宣言したので、その分少しだけペースを上げて進みます。

あちらに見えるのが屛風岩。その側面です。

横尾から涸沢までは、この屛風岩の周りに沿って進んでいくので、あの豪壮な岩を時折眺めながら進む楽しさがあります。

さて、なだらかな道が続いた後、ようやく本格的に登山道らしい道になります。

ほぼ厳冬期用装備にテントを背負っている状態なので、標準コースタイムよりも遅いペースで、かなりゆっくり進みます。

道は明瞭で急登はないものの、足元は安定しない場所が多く、トレッキングポールが登りでも下りでも大活躍します。

屛風岩が近づいてきました。本当に凄まじい威圧感を感じますね。

この季節は冬と春、そして上高地周辺では夏の足音を体感することができますが、少しづつ冬に遡っていく不思議な感覚を得られて非常に楽しい山登りができています。

そして相方の眠気がピークに達しそうなので、この先にある本谷橋で小休止を挟むことにしました。

13時45分、あれが本谷橋です。

山から雪解け水が集まり、綺麗な水が結構な勢いで流れています。

ここでしばらく休憩します。

休んでいる最中、涸沢方面から山岳部の大学生と思われる集団が通っていきました。

全員がピッケルを携えており、この先から雪の道となる事が予測できました。

遠い遠い、涸沢の錯覚

さて、20分ほど休憩をはさみ、本谷橋を出発します。

すでに割と疲労していましたが、この休止が結果的には非常に有意義であったことを後々知ることとなります。

本谷橋を越えると、明らかに雪の量が増えます。

ただ、この時期の雪は全然締まっていないので、べちゃべちゃの雪です。

今回の山行は、常にこの雪質に悩まされることとなります。

アイゼンを装着するか迷いましたが、この雪質だとアイゼンがきかずに沈んでしまいます。

チェーンスパイクが最適解かもしれませんが、今回は忘れてきてしまったため、ありません。

本谷橋から25分ほど歩くと、完全に雪の道になります。

トレースはありますが、相変わらず歩きづらい道です。

こうなると前を見る余裕が無くなりがちです。

確実に進んでいることを確認するために、たまに後ろを振り返りながら歩き続けます。

無心で歩いていると、遠くに涸沢カールの光景の一部が見えてきました。

こうなると一気にテンションが上がります。

大自然でかたどられた谷を進んでいきます。

この辺りは左側から時折強い風が容赦なく吹き付けてきます。

周辺の木々も強い風や地形によって右側に大きく傾いていますね。

15時16分、やっと涸沢ヒュッテが見えてきました!

すでに7時間以上行動しているので疲労はマックスに近いですが、目指すべき場所が目の前に見えると力が湧いてきますね。

ところが、涸沢ヒュッテが見えてからが信じられないほど長く、見えているはずの涸沢ヒュッテが全然近づいてきません。

現在16時。

さっきの地点からすでに40分以上歩いているのに、まだ到着しません。

大変、疲れた、という感情を通り越して、僅かに「苦しい」という感情が滲み出るほどの長さです。

長い長い雪の斜面です。

目の前に見える景色は全く変わりません。

後ろを振り返ると、確実に前に進んでいることが分かる佳景と、シャリバテしながらも頑張って登っている相方が見えます。

目標地点が目に見えてからが長い、というのは、これまで色んなところで経験してきたのですが、その中でもトップクラスに大変だと感じるような道のりでした。

16時15分、涸沢ヒュッテが目に見えてからおよそ1時間で、涸沢カールに到着です。

思いのほか苦戦しながらも辿り着いた、大自然で出来た円形の大ホールに感動が溢れてきました。

季節によって見せる表情が異なる涸沢カールですが、この季節は、どこか峰々に威厳を感じます。

さて、受付のため涸沢ヒュッテ内へ。

もうヘトヘトです。

夏や秋は、多くの登山者が卓を囲む場所ですが、今日は誰もいません。

テント場は、3張くらいしかありませんでした。

こんなに静かな涸沢ヒュッテはイメージとは違いますが、自分の時間をたっぷり楽しめる魅力があります。

なお、敷地内はアイゼン厳禁です。着脱所があるので、そこでアイゼンを外しましょう。

さて、テントを張って翌日に目指すザイテングラード、そして奥穂高岳方面を眺めます。

こうしてみると、向こうに見える涸沢小屋の左側の雪壁と、ザイテングラード上部の斜度が恐怖を感じるレベルです。

翌日の天気は微妙な予報で、小屋の方によると天気は下り坂だとのことです。

正直この柔らかい雪質だとキックステップが効かない可能性があり、無理だと思ったら迷わず撤退することを打ち合わせてからテントに入って休みます。

ちなみに、今回は新しく購入したRabのマット「イオノスフィア5」を試す目的もあり、この場所にしました。

実際にはR値4.8の実力と、Rab独自の技術を駆使した保温技術は間違いなく、かなり快適に寝ることができました。

目の前に見える威圧的な雪の壁に挑戦できるドキドキ感と、翌日まで疲れがとれなかったらどうしよう、という変な不安を抱えながら一瞬で熟睡。

長い一日を終え、勝負の2日目へ。

日本3位の高峰であり北アルプスの盟主、3,190メートルの奥穂高岳へ挑みます。

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