実に半年ぶりとなる本格的な登山、そのリハビリの場としては割とカロリーの高いテン泊双六岳ですが、1日目は天候にも恵まれ無事に終えることができました。
実は1日目は睡眠が足りておらず、以前より馬力が出なかったこともあり、体力回復のため午後6時には寝てしまいました。
天気予報は曇り予報、もしかしたら雨になるかもしれないという状況の中、1日目で十分すぎる程絶景を堪能したので、あまり期待を持ちすぎずに2日目を迎えようとしていました。
ところが、その杞憂を吹き飛ばすような絶景に出会える最高の1日となるのを、この時点では全く思っていませんでした。
新穂高温泉から双六小屋までの道のりは、前回の記事で紹介しております。
双六小屋からの夜明け
10月2日、午前5時。すでに黎明の時間となっており、寝坊寸前に起床しました。
相方が起こしてくれなければ、そのまま寝続けてしまったと思います。
すでに東の空は明るくなっており、急いで準備を整えて双六岳山頂へ向かいます。
双六岳までの道は、やや急ではあるものの、荷物をデポして向かえるので体の負担は少ないです。
ただし、細かい石と大きな岩が混じっている登山道のため、特に下山では静移動を意識して出来るだけゆっくり下っていきたいですね。
5時25分、双六岳と三俣山荘への巻道分岐に着きました。
ここから三俣山荘までは、通常のペースでおよそ2時間かかります。
先ほどの巻道分岐からほどなくして、また分岐が現れます。
双六岳へ向かわない場合は、この右側を通って双六岳を巻いていくことが可能です。
双六岳は遠くから見ると丸っこく巨大なため、今いる2,680メートル地点では頂上を望むことはできません。
現在5時30分、まだ頭が半分起きていない状態のまま登っていたので、一息ついてボーっとする場面もありました。
そういえば、思ったよりも天気は良さそうだな・・・なんて思っていた中、
来た道を振り返って登山の醍醐味を全身で味わうこととなるのでした。
天空の滑走路でご来光
天空の滑走路の直前、振り返ると暗闇に包まれていた山々が、雄々しく姿を露にしました。
見事な景色に思わず足が止まってしまいますが、同時にどこで日の出を迎えるか同僚と相談し、天空の滑走路で迎えることとしました。
未明の状態では寒さで防寒フル装備でしたが、温かい光が出てきたこの時、もう寒さは忘れてしまいました。
5時43分、ついに来ました「天空の滑走路」。
テンションが最高潮となったと同時に、ここが忘れられない光景となることを確信しました。
天候に恵まれたこと、そして起こしてくれた同僚に感謝しつつ、じっくり堪能させていただきます。
日の出が近い空の色です。槍ヶ岳がはっきりと見えます。
天空の滑走路は何もない場所ですが、それが一番美しく、最高の解放感に包まれることができます。
双六岳山頂まで続く道です。
広々とした道、穏やかな気候、黄金色の空、すじ状に伸びる雲、全てが調和して最高に心地よい風景を演出しています。
5時53分、東の空から太陽が昇ってきました。
登山をしている中で、暁光が現れるこの瞬間が、一番心が穏やかになる瞬間です。
槍ヶ岳も、陽の光を浴びて一層存在感を発揮しているように見えます。
天気が悪いのではないか?といった心配を一掃する最高の風景で感動しました。
さあ、久々のご来光を堪能したところで、双六岳山頂へ向かいます。
普通は山頂が近づくにつれて険しくなるものですが、双六岳山頂まではご覧の通り「登る」という感覚ではありません。なんとも表現しづらいですが、「渡る」という感覚が一番近いです。
道が広いので、景色に見とれていると正規ルートを見失いそうになります。
それでも、これほど素晴らしい景色を2,800メートルの地点で味わえているので、気分は最高です。
楽園という言葉がピッタリですね。
これを登った先が、もう双六岳の頂上です。
息を整え、最後の登りを超えた先に・・・
双六岳登頂
6時10分、双六岳に登頂です!
初めて登頂した山ですが、この登頂を果たした感覚が久々すぎて懐かしさが湧いてきました。
山頂にはいくつか看板が立っております。
どれも割とボロボロになっていますが、逆にそれが独特の風格を醸し出しています。
山頂から見る大キレット方面です。
さすが北アルプスを象徴する峻厳なルートですね。
こうして全容を眺めてみると圧倒されて言葉を失います。
また、天空の滑走路が槍ヶ岳に向かって伸びているように見えるのも相まって、非常に素晴らしい光景です。
笠ヶ岳方面です。こうしてみると、笠ヶ岳へ続く稜線がいかに綺麗な道だったか、改めて思い知らされます。
以前は軒昂と登った笠新道も、今のままでは体力的に厳しいかも・・・と思わざるを得ません。
それでも、またあの山に登頂したい!という思いが湧いてくるほど魅力に溢れた風景です。
実は今回の双六岳を除いて、まだ裏銀座方面の山に行ったことがないので、今回の山行で俄然興味が強くなりました。
これだけ綺麗な風景を前にして、挑戦したいと思わない訳がありません。
後ろ髪を引かれる思いですが、最高の景色を目に焼き付け、下山することにします。
何よりも、これ以上ないような気候で想像以上の景色を拝むことができたのは幸運としか言いようがありません。
登山は下山し終わるまでが本番なので、後は怪我したり膝を痛めたりしないよう、新穂高温泉まで安全に下っていきます。
新穂高温泉までの下り
景色は十分楽しんだので、下山は集中します。
周りに気をとられて転倒しては元も子もなくなるので、休憩箇所まで絶景はお預けです。
双六岳山頂から双六小屋までの下りは早く、30分くらいで到着しました。
すれ違う登山者は、双六岳ピストンの方が多かったものの、三俣蓮華方面に向かう方も何組かいらっしゃいました。
6時57分、双六小屋に戻ってきました。
ここから準備を整え、テントの撤収に入ります。
私たちがテント場に戻ったころには、20張くらいあったテントも、半分以下になっていました。
これだけ広々とテント場を使えるのも平日登山の醍醐味ですね。
だからこそ、初日でなぜあんなに駐車場が混んでいたのか不思議でたまりません。
8時ちょうどにテント場を出発、まずは鏡平山荘へ下ります。
8時41分、お花畑ゾーンまで来ました。
稜線は、最初は登りが中心ですが、双六岳からの下山では稜線の最初だけが登りの区間で、それ以外は下りしかありません。
甲斐駒の黒戸尾根みたいな、大下りからの登り返しが発生する山だと体力的にも精神的にも負担がデカすぎるので、本当にリハビリ登山として最適でした。
8時51分、弓折乗越です。
かなりいいペースで下山できています。昨日の感じだと、この時間あたりからいきなり暑さが増してくるので、すでにミドルレイヤー1枚になって身軽になりました。
9時20分、鏡平山荘に到着です。弓折乗越から30分ちょっとで降りてきたので、ペースとしては割と早めです。
ここでエネルギー補給のため休息をとります。
カレーや味噌ラーメン、牛丼、かき氷などを楽しむことができるので、本当に有難い拠点ですね。
暗然第一での下山を徹底しているので、あまり撮影はしません。
9時45分、鏡池で最後の槍ヶ岳を拝みます。昨日に比べれば雲が出る時間が早いですが、それでも素晴らしい好天であることは間違いありません。
10時54分、秩父沢まで下ってきましたが、案の定10月とは思えない暑さなので水をかぶります。
大きな危険個所や滑落ポイントもないため、かなりスムーズな下山ができます。
11時44分、わさび平小屋まで降りてきました。
もうここまで降りてくれば危険個所は落石以外ありません。
椅子がたくさん置いてあって休憩箇所に最適ですが、カンカンに照らされているので椅子もテーブルもアッチアチです。
ちょっと前まで天空の稜線にいたのに、もう終わりが近づいてきました。
登りのときは、この辺りの区間は虚無になりそうだなと思っていたのですが、距離こそ長かったものの割と楽しい山歩きができています。
12時54分、ゲートに着きました。
まさか双六小屋から5時間かからずに降りてこられるとは思っていなかったので、相当下りやすい道だったと思います。
13時5分、新穂高センターに到着したことを以って下山完了です。
上高地と比べて規模は小ぢんまりとしていますが、観光客の数が少ないのでのんびりとした雰囲気が流れていて個人的には新穂高の方が好みです。
改めて、久々の登山となりましたが、本当に最高の山行となりました。
双六岳は、北アルプスの中でも山行日数やアクセス、登頂難易度など、どれをとっても割と良心的で、加えて素晴らしいパノラマポイントや綺麗な山小屋が並んでおり、とにかく最高な思いをさせていただきました。
そして、裏銀座を目の前にしてしまったため、次の目標が形成されつつあります。
笠ヶ岳の登山後に笠ヶ岳を強く意識するようになったのと同じように、今後この山域を訪れるときは双六岳の姿も気にしながら、思い出をゆっくり振り返っていきたいと思いました。
10月1日
5:30 新穂高温泉 第三駐車場発
5:42 新穂高センター
7:03 笠新道分岐
7:17 わさび平小屋
8:54 秩父沢
9:09 チボ岩
9:34 イタドリヶ原
10:17 シシドウヶ原
10:41 クマの踊り場
11:00 鏡池
11:13 鏡平山荘
12:36 弓折乗越
12:43 弓折岳登頂
14:00 双六小屋着
10月2日
5:00 双六小屋発
5:25 巻道分岐
6:10 双六岳登頂
6:26 双六岳発
6:57 双六小屋着
8:00 双六小屋発(下り)
8:51 弓折乗越
9:20 鏡平山荘
10:54 秩父沢
11:44 わさび平小屋着
13:05 新穂高センター着