今回の舞台は、職場の同僚と共に10月の蓼科山です。
10月に入っても猛暑が続いたり、いきなり寒くなったりと、天候がなかなか安定しない中で1ヶ月くらい前から計画して決行した山行です。
前回の双六岳登山を経て、膝の痛みで陥った頽堕委靡の日々から抜け出し、早く次の山に登りたいと思っていたところでのお誘いでした。
メンバーは個性豊かな面々で、中央ハイトレイルを経験した同僚、筋肉量に長けている同僚、初めて登山に挑戦する同僚、そして、双六岳にも共に登った頼りになる同僚と、私を含めた5名での登山となりました。
蓼科山自体は6年ほど前に登っていますが、その時の記憶が殆どないので新鮮な気持ちで登ることができると思い、登山の前から気分が高揚しっぱなしです。
天気予報では、いまいち微妙な天気が連日報じられていたため、あまり期待しすぎないで当日を迎えました。
ところが、そんな思いを吹き飛ばすような勝景が待っているのでした。
登山データ
活動時期 | 時間 | 歩行距離 | 累積標高 | コース定数 |
2024年10月25日(1Day) | 5時間26分 | 4.7km | 640m | 11 |
七合目登山口からスタート
今回のスタートは、蓼科山七合目登山口です。休日だとこの駐車場はすぐに一杯になってしまいますが、今回は平日なので5台ほどしか駐車されていませんでした。
10時21分、駐車場から少し歩くと鳥居が見えました。
ここが今回のスタート地点です。
序盤は樹林帯ですが、すでに標高は1,900メートルを超えているため、ハイペースで移動すると人によっては頭が痛くなることもあります。
最初のうちは傾斜がゆるいものの、一定のペースを保ってのんびり楽しみながら登ります。
10時38分、馬返しのポイントです。
富士山をはじめ、登山では「馬返し」と呼ばれるポイントは色々な山で見かけることができます。
名前の通り、乗ってきた馬を返して、この先は徒歩で進まざるを得ない地点です。つまり、傾斜がこの先きつくなります。
馬返しを超え、傾斜がでてきました。
天気予報とは打って変わって、日差しが降り注いでいます。
この時点はまだ展望はありませんが、森林浴のおかげで序盤にも関わらず、満足感が高いです。
傾斜も気になりますが、それよりも道幅が思ったよりも広い事の方が気になります。
ロープが張られているものの、深い霧に覆われていた場合、道迷いの心配が増してきます。
馬返しからおよそ20分、何となく覚えのある道が突如現れました。
6年前に行った頃は、休日だったので人でごった返していた記憶があります。
これまで余裕だった人でも、ここは流石に苦戦してしまうほど道の状態が変わります。
ある程度傾斜を登ったあとに、不意に後ろを振り返ってみたところ木々の間から雲海が見えました。
車で登山口まで移動している最中は一面曇りの状態だったので、それを抜けた開放感が、こんなところで味わえました。
雲海を堪能しましたが、もうお昼が近いので雲が上がってくる可能性を鑑み、景色はほどほどにして先に進みます。
蓼科山は人気の山域なので、随所にロープや道案内の看板があります。
こういう道だと足元ばっかり見がちなので、分かり易い看板があると非常に有難いですね。
「蓼科山頂」と書いてありますが、山頂はまだ全然先です。
地図を見ると、直線距離ではだいぶ歩いてきたように見えますが、ほとんど傾斜がないゾーンが長かったこともあり、実際は未だ半分もいっていないです。
11時10分、天狗の露池と書かれた看板があります。
実際の天狗の露池は、この看板から少し外れたところにある景勝地ですが、今回は見送ります。
大小さまざまな岩と共に、枯れきった倒木も出てきて、道はより歩きづらくなってきました。
さっきの雲海を見てしまうと、ついペースが上がってしまいますが、今回は5名パーティということもあり、ペース配分はいつもよりも注意して登っています。
そのおかげで、膝の負担も体力的な負担も限りなく少ない状態で登れています。
こんな登りもあります。
下山の時が大変そうだなあ・・・なんて話をしながら登っていきますが、今のところ降雨もなく岩も濡れていないので、割と悪くない環境で登山ができています。
そして、また後ろを振り返って素晴らしい景色を味わいます。
あの雲海にダイブしたくなるほど心動かされる光景です。
こういう景色を見て意図せず笑顔になってしまうのが、大自然の好きなところです。
更なる景色を求めて、まずは途中の蓼科山荘まで向かいます。
蓼科山荘はもう目の前です。
ここまででも、まあまあ大変な道のりでしたが、七合目登山口からの蓼科山登山は、この先が本番です。
急峻な岩場を渡る
11時42分、蓼科山荘に到着しました。
ほぼ標準のペースで来ているので体力は問題なく、パーティも不調なメンバーがいないため、非常に順調です。
ここには山バッジや手ぬぐい、Tシャツをはじめとしたお土産がずらりと並んでいて、長居してしまいがちでね。
小休止の中で、ここからの大変な道に備えてじっくり補給します。
蓼科山荘からの道は、大岩が増えるのと同時に、道幅も目に見えて狭くなります。
微妙に地面がぬかるんでいるのが気になりますが、今回履いているスカルパのゾディアックテックがグリップ力を発揮して、歩行をサポートしてくれています。
さあ、蓼科山の終盤に現れる急峻な傾斜です。
この時点ではまだ浮石は多くないですが、足元ばかり見ていると、いざという時の落石に対応できないので目線は下げすぎずに進む必要があります。
山頂までの道で、1か所だけ鎖が設置されています。
使わなくても登れますが、足場が濡れていたり道が分かりづらい場合には非常に役立ちます。
しかも、ここの鎖は牢乎で安心感があります。こんな場所で無理をしないように鎖を使ったほうがいいかもしれません。
今日は人が少ないのでそんなに難易度が高いと感じませんが、休日で人がたくさんいる状況だと、より一層険しくなるように思えます。
時間をかけてでも、安定をとってゆっくり登っていきます。
急な岩場が続きますが、目の前の岩に「頂上まで十五分」の文字を発見!
正直、こういう案内が目に入ってからの距離が想像以上に遠く感じてしまう経験が多く、あまり信用していません。
また、後ろを振り返ってみます。
今度は完全に木々を超え、雲海が大迫力で眼前に飛び込んできました。
すでに12時を回っているのに、これだけしっかりと雲海が見られるのは嬉しい誤算です。
そして前を向くと、この日最も注意しないといけない岩の斜面が心を引き締めます。
今度は浮石がいくつも転がっており、特に谷側は浮石だらけなので、すれ違う時には要注意です。
こういう場所では、声をかけあっていく必要も出てきます。
遠くの方を見ると、どこまでも雲海が続いていて本当に幻想的です。
この日は雲海の発生条件にふさわしく、数日間低気圧が居座っていたこと、ほぼ無風であることなど色々な条件が良い具合に重なって綺麗な雲海が広がっていました。
さて、山頂まで残り僅か。一瞬も気を抜けない岩場が続いた中で、突然目の前に6年前の記憶を呼び覚ます建物が見えてきました。
大雲海に囲まれた蓼科山山頂
目の前に、蓼科山頂ヒュッテが見えてきました。
6年前、まだあまり登山の経験が無かったころに、ヘトヘトになりながら向こうの建物を見つけたときは、何とも言えない達成感が襲ってきたのを覚えています。
この瞬間、その時の記憶だけが蘇ってきてノスタルジーな気持ちが湧いてきました。
こちらが蓼科山頂ヒュッテです。
10時~14時の間は軽食の注文が可能で、お土産屋や有料のトイレが利用可能です。
そして、蓼科山頂の案内看板があります。現在12時22分、登山口から2時間ほどで到着です。
この山の大きな特徴として、渺茫と言えるような山頂であることが挙げられます。
初見のときは、その広さに度肝を抜かれました。
それこそ、広さだけでいえばフットサルができそうなくらい広い山頂で、どんなに道中が混んでいても山頂はのんびり過ごすことができる素敵な山です。
山頂中央部には蓼科神社奥宮があり、大きい岩を縫うように進んでお参りします。
ちなみに、先ほどの蓼科山頂ヒュッテで、書置きで御朱印を手に入れることができます(600円)。
山頂が広いゆえに、霧などが出ていると方角が分からなくなりそうです。
さすが諏訪富士と言われている名峰、本家の富士山も山頂が広大で1周するのに時間がかかりますが、もちろん富士山には及ばないものの、蓼科山も1周するのはそこそこ大変です。
だいぶ雲が上がってきましたが、豁然として目の前に北アルプスのオールスターが広がっています。
これが見たいがために、大変な登山を続けているのです。
雲海は何度見ても胸が弾む素晴らしい現象ですね!
山頂を見渡すと、あそこにケルン状の少し高い部分があります。
気になるのであそこに行ってみましょう。
そこには、このようなモニュメントがありました。
蓼科山からは360度の展望があり、極めて多くの名峰がこの山から確認することができます。
それを分かり易くここに示していますね。
どうやら、このモニュメントはmont-bellが寄附しているようですね。
長野のmont-bellはまだ立ち寄ったことがないので、機会があったらいずれ行ってみたいと思います。
改めて山頂を眺めていると、笑っちゃいそうになる程だだっ広い山頂で、天気が良ければ穏やかに過ごすことができるので友達同士での登山や、ファミリーでの登山におススメです。
山頂でゆっくりしていると、白樺湖方向の雲海が解散して、下の様子が見えてきました。
雲の流れで景色が移り変わる様子をボーっと眺めるのも、登山をしてきた者の特権です。
慎重を期する下山道
時刻は14時を回り、下山の路につきます。
さて、登りは順調だったものの、登りの時に薄々感じていた下山の怖さに向き合う必要があります。
雲が一気に上がってきて、さっきまで見えていた雲海はすっかり見えません。
というより雲の中に入っていきます。
そして、岩がまあまあ湿っているので、転倒に注意です。
同じ登山道でも、登りと下りでは景色、凶悪さ、注意ポイントなど、全く異なります。
グローブがあると安心感が増すので、ぜひ持っておきたいですね。
道が空いていたおかげで、思ったよりスムーズに蓼科山荘まで戻ってこれました。
時刻は14時35分、計画から大きく外れることなく登山ができています。
目の前を、双六岳でも共に登った同僚が先導しています。
この付近は細かい足の運びが重要で、滑りやすい砂利を避けていくと下山しやすいです。
15時2分、天狗の露池看板に戻ってきました。
登りのときは、この辺は暑くて暑くてしょうがなかったのですが、周りを雲に覆われた今は、ミドルレイヤーを重ねないとやってられない程気温が変化しています。
こういう下山道は、ほんとうに膝に気を配らないといけません。
せっかく持ってきたトレッキングポールを使わずに下山してしまいましたが、こんな場所でこそトレッキングポールが最高のサポートを果たしてくれるので、積極的に使うべきですね。
石を積み上げて出来たケルンがあります。
ここまで来れば、大変な下山道は終わりに近いです。
登りの時は、なぜかこんなに目立つケルンを見落としていました。
あの鳥居が、今回の山行の終わりです。
ほんとうに寂しい気分になりますが、無事に終えられたことに感謝しながら鳥居を抜けます。
15時45分、蓼科山七合目登山口まで戻ってきました。
これにて下山完了です。数時間前も同じ地に立ったのに、登山開始前の意気高く向かう気持ちと、下山後の寂しさと達成感が混ざった不思議な気持ちで、今こうして振り返ると非常に充実していたと思います。
蓼科山は既に経験していたとはいえ、相当前のことだったので、初挑戦の気持ちで登り始めました。
ところが、随所で思い出が蘇ったり、同僚と楽しみながら登山ができたことで新鮮さを楽しむよりも、懐かしさを楽しむ方向で、思い出が上書きされていきました。
そして、蓼科山が何度でも楽しめる素晴らしい山だと証明できたことが、今回の登山の最高の収穫でした。
10月25日
10:21 七合目登山口発
10:38 馬返し
11:10 天狗の露池分岐
11:42 蓼科山荘
12:22 蓼科山山頂着
14:07 蓼科山山頂発
14:35 蓼科山荘
15:02 天狗の露池分岐
15:45 七合目登山口着